情報と会議と
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次の日、前線のヒースクリフからメールが届いた。75層のボス戦をするから参加しろと。もちろんキリトとアスナにも来ていた。キリトはぶつぶつしていたがアスナがなだめていた。まあ、すでに死者が出ているって言われたらな……
二十ニ層の転移門広場ではニシダが俺たちを待っていた。昨日ニシダだけに出発時間を知らせたからだ
「ちょっとお話よろしいですか?」
そのニシダの言葉に頷いて、広場のベンチに腰掛ける
「……正直、今までは、上の階層でクリアを目指して戦っておられるプレイヤーの皆さんもいるということがどこか別世界の話のように思えておりました。……内心ではもうここからの脱出を諦めていたのかもしれませんなぁ」
俺たちは無言でニシダの言葉を聞く
「ご存知でしょうが電気屋の世界も日進月歩でしてね、私も若い頃から相当いじってきたクチですから今まで何とか技術の進歩に食らいついて来ましたが、二年も現場から離れちゃもう無理ですわ。どうせ帰っても会社に戻れるか判らない、厄介払いされて惨めな思いをするくらいなら、ここでのんびり竿を振ってたほうがマシだ、と……」
「俺も、同じことを考えていました。ここには、抑圧してくる親も、絶対にやらなければならないものはないですから……でも、俺は戻らないといけない。現実世界にやり残したことがあるし、何より会いたい人がいる」
……まあ、キリトのやつに気付かされたんですけどねとつぶやいてさらに言う
「この世界に来たことは後悔していません。キリトにもアスナにも……その他大勢のプレイヤーにも……もちろんニシダにも出会えた。こうやって、会話もできる。この世界で生きている。データが作り上げた、仮初めのものだとしても、この世界で経験したり感じたことは本物だと思うんです。だから、ニシダさんもこの世界で経験したり感じたりしたことは決して無駄ではないと思います」
俺の勝手な自己解決ですけどと苦笑まじりにつぶやいて口をつぐむ
「……そうですなぁ、本当にそうだ……」
ニシダの眼鏡の奥で光るものがあった。キリトは涙目。アスナは盛んにうなずいている
「今のリンさんのお話を聞けたことだって貴重な経験です。五メートルの超大物を釣ったことも、ですな。……人生、捨てたもんじゃない。捨てたもんじゃないです」
ニシダは立ち上がった
「や、すっかり時間を取らせてしまいましたな。……私は確信しましたよ。あなたたちのような人が上で戦っている限り、そう遠くないうちにもとの世界に戻れるだろうとね。私にできることは何もありませんが、……がんばってください。がんばってください」
最後にニシダと握手をしてわかれる
「また、戻ってきますよ。その時は付き合ってください」
「では、また」
そして俺たちは転移門
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