第五十九話 兄その三
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「はいっ」
「焼き鳥?」
「味は忘れないでしょ」
右目でウィンクして彰子に問う。
「だからよ。ほら」
「そうね」
そしてこれは正解だった。彰子は鋭い味覚を持っている。また味を忘れない女の子だったのだ。だから料理もかなり上手であったりする。
「それじゃあ」
「はい、どんどん」
わんこそばのような掛け声で彰子に食べさせる。彰子はそれに従いまずは一本口に入れる。そうして食べだすとすぐに何かを思い出したのだった。
「あれっ!?」
「思い出した!?」
「うん、これって」
焼き鳥を食べながら答える。
「兄さんの味」
「えっ!?」
「兄さん!?」
皆彰子の言葉を聞いて思わず声をあげた。
「彰子ちゃんお兄さんいたの」
「初耳だけれど」
「私もよ」
親友である七海も驚いた顔をしている。本当に初耳なのがそれでわかる。
「妹さんいたのは知っていたけれど」
「実はいるの」
今はじめて本人から明かされる衝撃の事実であった。そもそもそんなものが衝撃になってしまうのが実に彰子らしかったがそれはそれであった。
「一人」
「そうか、一人か」
「で、どなたなんだ?」
ロザリーがまた焼き鳥をモグモグと食べている彰子に対して問う。
「そのお兄さんは」
「髪が黒くて」
「ふんふん」
これはよくある。黒い髪は。
「目が黒くて」
「成程」
これまたよくある。色々な目の色が連合には存在するが黒い目は一番多い色の目の一つであることは間違いない。ついでに言えば黒い髪もそうである。
「肌は黄色」
「アジア系の血が強いんだね」
「まあ当然か」
彰子はかなり血の濃い日本人である。だから彼女の兄もそうであって当然であった。これも少し考えてみれば当然のことであった。
「そして次は」
「背が高くて」
「長身ね」
「すらりとしてて」
「スタイルいいんだ」
「ってちょっと待て」
ここまで聞いたところでロザリーが言う。
「どうしたの?」
「髪と目が黒くてすらりとした長身のアジア系の人か」
「うん」
彰子はロザリーのその言葉に頷く。やはり焼き鳥はそのまま食べ続けている。見れば既に何本か食べ終えて木串が転がっている。どうして彼女も中々食いしん坊であった。
「そうだけれど」
「それはひょっとして」
ロザリーは記憶を辿りながら彰子に対して言う。
「あの人か!?」
「あの人!?」
皆ロザリーの指の先を見る。見ればそこには今さっき彰子が言ったままの容姿の店員さんが立っていたのであった。中々の美男子だ。中性的な顔立ちは彰子よりも明香のそれに近いと言えた。
「あの人だよな」
「あれ、兄さん」
「ひょっとして彰子か」
向こうもようやく彰子に気付いた。
「どうしてここに」
「皆とパーティー
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