第五十九話 兄その二
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「何だありゃ」
「戦いの前の踊りだ」
タムタムが素っ気無く皆に答える。彼は飲み食いに専念している。
「戦いの前の!?」
「そうだ。色々叫びながら踊る」
「へえ」
「アンナアルンゲンナデカャーーール!」
また叫ぶ。そうしてポリネシア系の踊りをはじめる。
「何かラグビーみたいだな」
「そうだよな」
皆その踊りを見て言う。
「どっちかっていうとな」
「少なくとも野球って感じじゃないな」
「まあそうか」
タムタムもそれは認める。
「俺は別に何も感じないがな、フランツも」
「そりゃあれだろ?」
「あんた達の国が」
フランツはニュージーランド人、タムタムはパラオ人である。ポリネシアに近いのだ。だから彼等にしてみれば普通なのだ。とりわけフランツのいるニュージーランドではラグビーが盛んであるが常に試合の前には戦いの舞を踊っているのである。だから普通なのだ。
「まあそれもそうか」
タムタムはそれも認める。
「だからまあ気にしないでくれ」
「ああわかったよ」
「けれどねえ」
それでもロザリーはまだフランツを横目で見ていた。
「あの言葉は何処の言葉よ」
「オラァクサムヲムッコロス!」
いきなり顔を憤怒の凄まじい形相にして叫んでいた。
「さっきから妙に濁音だし」
「あれか」
「ええ、あれ」
皆も実は気になっていた。それをタムタムに聞く。
「そっちの現地の言葉なの?ニュージーランドの」
「そんなのあったっけ、ニュージーランドに」
皆で話をする。どうにも思い浮かばないのだ。ニュージーランドといえば英語である。後はマオリ族の言葉が残っている。連合公用語の銀河語と一緒に学んでいるのだ。
「あれはオンドゥル語だ」
「オンドゥル語!?」
「何それ」
「俺もその言葉のルーツはわからない」
それについてはタムタムも知らなかった。まずは首を横に振る。
「悪いがな」
「そうなの」
「一説にはルーツは日本らしい」
意外な国の名前が出て来た。
「日本に!?」
「あれ日本語!?」
「多分違う」
またしても変な返答になっていた。しかしこれはタムタムもわかっている。
「異星人の言葉だとも言われているが」
「余計わからないぞ」
ロザリーは困ったような顔でタムタムに突っ込みを入れる。
「遥か彼方からどうやって伝わったんだ」
「だから謎とされている。だが」
「だが?」
「翻訳は日本語がもっとも簡単だ」
またしても妙な話になる。
「実はな」
「そうなの。じゃあ日本語ルーツ!?」
「あまりそうは思えないよね」
「ねえ」
皆口々に言う。
「あんな濁音日本にはないし」
「昔の日本の東北の言葉かしら」
日本人の七海が言う。首を傾げながら。
「けれどあんなのだったか
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ