第40話
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井亜雄は一方通行の頭に銃口を向けて一方通行を見て軽く笑った。
「ハッ、結局お前にはヒーローみたいに決着を着けるほどの力はなかった訳だ。
無理もない我々みたいな人間はみんなそうだよ。
みんな、そんなものなんだ。」
天井は引き金にかけた指に力を込める。
パン!、という乾いた銃声が響いた。
その銃声は天井の持つ銃から響いたものではなかった。
天井の背中、腰の辺りから灼熱感が襲いかかった。
天井はゆっくりと振り返る、否、ゆっくりしか身体は動かなかった。
少し離れた所に中古のステーションワゴンが停まっておりその車のドアは開いていた。
そこから白衣を着た女が降りてくる、手には護身用の拳銃が握られていた。
「芳川、桔梗。」
その女の名前を言って天井は地面に倒れた。
倒れた天井はゆっくりと目を開けると、その視界の先には白衣を着た女性がいた。
芳川桔梗。
彼女は天井に背を向けてステーションワゴンの後部ドアを開けて何かを操作していた。
車内に収められていた装置に見覚えがあった、培養器だ。
あの中には最終信号が入っていると天井は予想して立ち上がろうとするが上手く身体が動かない。
かろうじて上体だけを地面から起こすと震える手で拳銃を構える。
ふと、桔梗は振り返った。
作業は終えたのか後部のドアを閉めて護身用の拳銃を天井へ向ける。
彼女の顔には笑みが浮かんでおり銃を天井に向けたままゆっくりと天井の元に近づく。
「ごめんなさいね、わたしってどこまでいっても甘いから。
急所に当てる度胸もないくせに見逃そうとも思えなかったみたい。
意味もなく苦痛を引き延ばすって、もしかしたら残酷なほど甘い選択だったかもしれないわね。」
「どうやって、この場所を・・・・?」
「携帯電話のGPS機能なんて何年前の技術かしらね。
貴方、気がついていなかったの?
その子の携帯電話、まだ通話中なのだけれど。
ここでの事は電話越しに拾った音でしか分からないけど、少なくとも「外」で騒ぎが起きている様子はないわね。
あと、その子なら心配ないわ。
知り合いに凄腕の医者がいてね、「冥土帰し」と呼ばれているぐらいだし、彼の腕なら何とかなるでしょう。」
天井の拳銃を見ても少しもひるむことなく近づいてくる桔梗を見て天井は言った。
「何故・・・理解できない。
それはお前の思考パターンではない。
常にリスクとチャンスを秤にかける事しかできなかったお前の人格では不可能な判断だ。」
天井は「実験」を通じて桔梗の人格を多少なりとも理解していた。
理解してたからこそ桔梗がこんな行動をとるのは天井には信じられ
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