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とある星の力を使いし者
第40話
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分の力が必要な人がいればその人を全力で助けると言ったあの男。
この二人の考えは全く違う物だ。
だが、根本的な所は一緒なのだ。
この世界には主人公なんていない。
都合の良いヒーローなんてどこにもいない。
それでも大切なものを失いたくなければなるしかないのだ。
無駄でも無理でも分不相応でも、自分のこの手で大切なものを守り抜くような存在に。
初めからヒーローになれるような人間はいない。
だからこそその場に居合わせた人間がやらなければならないのだ。
主人公のような行いを。

「確かに俺は一万人もの妹達(シスターズ)をぶっ殺した。
 だからってな、残りの一万人を見殺しにして良いはずがねェンだ。
 ああ綺麗事だってのは分かっている。
 今さらどの口がそンな事言うンだってのは自分でも分かっている!
 でも違うンだよ!
 たとえ俺達がどれほどのクズえも、どンな理由を並べても、それでこのガキが殺されて良い事になンかならねェだろォがよ!!」

がくん、と一方通行(アクセラレータ)の足から力が抜ける。
それでも倒れる訳にはいかない。
絶対に。

「つ、がァあああ!!」

一方通行(アクセラレータ)は身を低く落すと弾丸のような速度で天井亜雄の元へと跳んだ。
圧倒的優位に見えて実は追い詰められていたのは一方通行(アクセラレータ)の方だった。
長期戦は期待できない。
だから最短距離を直線という一番単純な攻め方しか選べなかった。
この一撃で決めなければ意識が落ちてしまう。
その前に勝負をつけないといけない。
天井もそれが分かっているのか逃げに徹した。
後ろに逃げてもすぐに追いつかれる。
だからこそ天井は横に思いっきり跳んだ。
ついさっきまで天井がいた所に悪魔の爪が薙ぎ払われる。
一方通行(アクセラレータ)は目だけを動かして左を見る。
視界の中に天井亜雄がいた、思いっきり横に飛んだのか無様に転がっている。
一方通行(アクセラレータ)は身体ごと振り返ろうとした。
だが足がもつれたかのようにバランスを崩した。
慌てて踏み止まろうとしたが足が動かなかった、額の傷が一際大きく痛んだと思ったら、次の瞬間には痛みの感覚が消えていた。
どさり、という音を聞いて、自分がようやく地面に倒れた事を知った。
横倒しになった視界に、守るべき少女の姿が映ったが、意識は深い闇へと呑み込まれた。





天井亜雄は道路に倒れた一方通行(アクセラレータ)を呆然と眺めている。
力なく笑うと爪先で一方通行(アクセラレータ)の頭を小突きして「反射」が効いているか確かめる。

(「反射」は無効、か。
 できるならこんなものに手を出したくはないが、しかし万が一再び立ち上がったら、次は絶対に避けられない。)


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