第40話
[3/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
裂けた右手を左手で押えつつ、一方通行から距離を取る。
(くそ、特殊弾頭で額を撃ち抜いたのだぞ、どういう理屈で生き延びている!?)
天井が使った特殊弾頭の名前は「衝槍弾頭」という弾丸だ。
弾丸に特殊な溝を刻む事で、空気抵抗を逆手に取って衝撃波の槍を生み出す次世代兵器だ。
だが、これは弾丸の速度のほとんどが空気抵抗に食われてしまう事を意味する。
普通の弾丸と比較するとその誤差は〇.四秒に満たない誤差。
だがその誤差の間に打ち止めの治療を完遂し、彼は土壇場で「反射」を取り戻したのだ。
結果、速度の死んだ弾丸は一方通行の頭蓋骨に亀裂を入れたが、致命的な衝撃波の槍は防ぎ切った。
一方通行は幼い打ち止めを庇うように、額から流れる血も気にせずに天井亜雄の前に立ち塞がる。
天井は唯一使える左手で予備の拳銃を抜くがその手は小刻みに震えていた。
「ハッ、それは何をしているつもりなのだ?
今さら、お前のような者が。」
打ち止めを庇う一方通行を見た天井は半ばヤケクソのように言う。
「分かってンだよ。
こンな人間のクズが、今さら誰かを助けようなンて思うのは馬鹿馬鹿しいってコトぐらいよォ。
まったく甘すぎだよな、自分でも虫唾が走る。」
甘いだけで優しくない芳川桔梗。
誰かを守ろうとした男を一瞬のためらにもなく鉛弾をぶち込んだ天井亜雄。
一万人もの人間を殺しておきながら今さら人の命は大切なんです、と言い出す一方通行。
こんな腐った世界の人間が今さら人に救いを求めるなんて間違っている。
一方通行はそんな事くらい分かっている。
だからこそ彼は言った。
「けどよォ、このガキは関係ねェだろ。
たとえ、俺達がどンなに腐っていてもよォ。
誰かを助けようと言い出す事すら馬鹿馬鹿しく思われるほどの、どうしよォもねェ人間のクズだったとしてもさァ。
このガキが、見殺しにされて良いって理由にはなンねェだろうが。
俺達がクズだって事が、このガキが抱えているモンを踏みにじっても良い理由になる筈がねェだろうが!」
一方通行は己の血で視界を赤く染めながら叫ぶ。
打ち止めは誰かに助けてもらわなければいけないのだ。
一方通行や天井亜雄と違って、彼女にはまだそれくらいのチャンスが残っているはずなのだ。
あの「実験」を止める為にやってきた二人の無能力者。
一人は何の理由も目的もなく、ただ傷つけられる妹達を助ける為に立ち上がったあの男。
一人は自
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ