第40話
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いける、と一方通行は確信した。
意味不明だった打ち止めの言葉は徐々に日本語へと変換され、膨大なコードを「理解」して上書きしていく。
ウィルス起動準備の方に先を越されていた分は、もはや完全に追いついた。
これなら時間内ギリギリだがウィルスコードを完全修正する事が出来る。
そう確信した時だった。
がさり、という物音が一方通行の耳に入った。
一方通行は視線だけを横に向けると、運転席のドアで挟まれて気絶していたはずの天井亜雄がいつの間にか一方通行の側まで近づいていた。
近づいているだけなら何も問題はないが彼の手には拳銃が握られていた。
「邪魔を・・・す、るな。」
血走った目で、天井亜雄が呻き声をあげる。
残りコードは二万三八九一。
まだ手を離すわけにはいかない。
モニタの警告文は数えるほどまでに減ったがこれが一つでも存在してはいけない。
お互いの距離は四メートル弱、外そうとしても外せる距離ではない。
今の一方通行は打ち止めの脳内の信号を操る為に、全力を注いでいるので「反射」に力を割けない。
「邪魔を、するな。」
今の一方通行はあのチャチな拳銃の弾が一発でも死ぬ。
生存本能が打ち止めから手を放せ、と告げる。
そうすれば一方通行は絶対に助かる。
だけど、それでも彼は打ち止めから手を放せなかった。
放せるはずがなかった。
残るコードは数はわずかに一〇二、警告ウィンドウはたった一つ。
「邪、ば、を・・・ごァああ!!」
絶叫する天井亜雄の震える手が握られた拳銃の引き金を引く。
乾いた銃声、それが耳に入る前にハンマーで殴り飛ばすような衝撃が一方通行の眉間に襲いかかった。
頭に受けた衝撃で、背が大きく後ろへ仰け反るがそれでも彼は手を放さなかった。
絶対に放さない。
「Error.Break_No000001_to_No357081.不正な処理により上位命令文は中断されました。
通常記述に従い検体番号二〇〇〇一号は再覚醒します。」
ポン、という軽い電子音と共に最後の警告ウィンドウが消滅する。
聞きなれた少女の声が聞こえると同時に一方通行は理解した。
危険なコードは全て、この手で上書きし終えた事を。
彼の手から力が抜けていく、銃撃の衝撃に浮いた身体がゆっくりと、ゆっくりと、温かい少女から離れていく。
宙にある一方通行は手を伸ばす、だが伸ばした手の先はもはや少女に届かない。
(まったく、考えが甘すぎンだ
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