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魔王の友を持つ魔王
§16.5 夏休みの終わりに
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で相手を束縛又は切断と」

「……聞いた恵那が間違ってた」

 顰め面で神剣を握る。恵那はまだ、諦めていないようだがふらついている。そろそろ限界だろう。

「そろそろ帰ろう? もう訓練十分だよ。ありがとう」

「最後にもう一回……!!」

 体に鞭打って立ち上がる恵那。天叢雲を構える彼女の瞳に迷いは無い。

「これが最後だからね」

「最後か。なら無茶出来るね。絶対れーとさんに一泡吹かせてみせるから」

 不敵に笑う恵那の様子に、黎斗は嫌な予感を感じる。

「え? それってどうい」

「天叢雲劍よ。願わくば我が身を……」

「うわ、ちょ、待て待って!! 結界張ってない場所(こんなとこ)でソレはヤバイから!!」

 慌てふためく黎斗を余所に、恵那は悠々言葉を紡ぐ。

「あぁ、もう!! 塩は……もってきてねぇ!? 僕の馬鹿ー!! 我流形成しかないか、我が前にラファエル。我が前にミカエル。我が前にガブリエル。我が前にウリエル……!!」

 急ぎで結界を張ろうにも塩が無い。こんな展開を予想していなかったのだから当然なのだが。東西南北を起点とした黎斗の呪力が渦を巻き、急速にグラウンドを覆っていく。不可視化及び魔力探知遮断の結界だ。攻撃に対する防御機能は皆無だが、相手に攻撃を何処にも当てさせなければ良いだけの話なのだから問題は無い。

「ムチャクチャやるなぁ。……付き合う僕も大概か」

「いくられーとさんでも、これを防げるかな!?」

 恵那の振るう、凄まじい速度の太刀を難なく回避。ワイヤーで天叢雲劍を絡め捕り遠くへ飛ばす。投げられた神刀は弧を描くようにバスケットゴールに入っていく。

「あ、ラッキー。入った入った。狙ったワケじゃないんだけどな。ついでに恵那も捕獲っと」

 相棒を失い雁字搦めに束縛された恵那に降参以外の術は無い、そう思った黎斗は仰天する。

「まだまだぁ!!」

「な!?」

 肉を切らせて骨を断つというのだろうか。須佐之男命から借り受けた莫大な力に物をいわせて、出血しながらも力尽くで束縛から逃れる。ワイヤーを紙一重で回避しながら突き進んでくる恵那に対する黎斗の反応は、面白い程に慌てふためいている。てっきりここで終わりだとおもったらしい。

「え、えぇ!? ねぇ、ちょっちょ、デタラメだろこんなの!!」

「れーとさんに言われたくないよ! それに窮鼠猫をかむ、っていうでしょ。最後までわからないんだから!!」

「……ごもっとも」

 ずっと隅で傍観していたエルがぼそりと呟く。

「マスターにデタラメなんて言われるのは可哀想ですよ」

 その言葉の終わらぬうちに、恵那の身体は大地にひれ伏していた。黎斗のワイヤーが、再び恵那の身体を捉えたのだ。

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