第十七話 舞と音楽その二
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「何か自衛隊って結構」
「身近な存在なんですね」
「特にこの学園は理事長一族が昔から軍と縁が深い」
帝国陸海軍だった頃からだというのだ。
「今は造っていないが兵器も造っていた」
「っていうと戦闘機とかですか」
「軍艦とかも」
「戦闘機が多かった。陸軍も海軍も好きだったからな」
陸軍に至っては戦車や装甲車よりも航空機の方を多く、しかも圧倒的に造っていた程だ。東条英機にしても航空機をかなり重視していた。
「それで八条重工も戦闘機を造っていた」
「そうなんですか」
「それでなんですか」
「今八条重工はそうしたものは造っていないがな」
もう兵器自体を製造開発はしていないというのだ。
「軍需産業というものはだ」
「何かあるんですか?」
「採算が取れにくいのだ」
愛実にこのことを話すのだった。
「案外な」
「あれっ、そうなんですか」
「技術や設備に莫大な投資を常に行わないとならない」
まずはこの問題があった。
「それに市場も限られている」
「軍隊だけだからですね」
「そうだ、それではだ」
「採算が取れにくいんですか」
「では君はフォアグラを常に仕入れたいか」
「お店潰れます」
愛実は日下部の今の問いに即答で返した。
「あんな高いものとても」
「そうだ。パン屋でもキャビアパンなぞは」
「そんなの作るの馬鹿ですから」
聖花が即座に切り返した。
「キャビアって」
「しないな」
「フォアグラもないですから」
「予算の関係でだな」
「そんな。言ったら何ですけれど」
聖花はここで日下部のその白い詰襟を見ながら述べた。その詰襟の軍服は確かに見栄えがいい、だがそれでもだった。
「海軍みたいなことは」
「しないな」
「そんなの売れないですよ」
聖花はキャビアパンについてはこうも評した。
「多く作れないですし材料費が大変で」
「しかも買い手が限られているな」
「奇抜なだけですね」
まさにそれだけだというのだ。
「話題作りにはなっても」
「本当にそれだけだな」
「卵ですから」
キャビアといってもチョウザメ、即ち魚の卵だ。それならというのだ。
「イクラだったら絶対に駄目ですし」
「確実に合わないな」
「イクラは丼にするものです」
パン屋の娘も主食は日本にいるのなら御飯だ、それならだった。
「パンの上にかけたりしないですから」
「ではこの場合の卵は」
「普通の卵ですね」
つまり鶏の卵だというのだ。
「ハムサンドなり何なりの方がずっといいです」
「そういうことだ。兵器というものはだ」
「採算が取れないんですね」
「非常に取りにくい。テレビや自動車の方がずっといい」
作るのならというのだ。
「そういうものだからな」
「だから八条グループも撤
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