GGO編
百七話 Chase
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筈である。少なくとも、そうあって全く違和感は無いはずだ。しかし実際の所弾丸はシノンの座る席の窓を突き破り、そして今彼が撃った致死の呪いを持った弾丸は、シノンを狙ったように助手席の窓縁で火花を散らした。
「嫌あああぁぁっ!!」
突如、絶叫が響いた。聞き慣れた彼女の声とは余りにも違う物だったが、アイリにはそれがシノンの声だとハッキリと分かった。何時もの彼女とは似ても似つかない……心の底から湧き上がったような本能的な恐怖の叫び……
「あ……あ……」
その声を聞いた瞬間に、アイリの頭の中で声がした。
『嫌ぁ!止めて!止めてぇ!』
二発目の着弾。助手席の装甲がカンッ!と高く、軽い音を響かせて、火花を散らす。
そんな小さな音であると言うのに、シノンはビクリと大きく肩を震わせて、隠れるように益々自分の身体を強く抱き締めて、小さく小さく縮こまろうとする。
細い喉を震わせて、只同じ言葉を繰り返しているようだった。
「やだよ……助けて、助けてよ……!」
また、声。
『助けてよ……スィぃ……』
「アイ、リ……」
呟くように言って、彼女はふとまだ左後方に居る死銃が目に入る。ガンシートからキリトが必死の抵抗を続けているにも関わらず、グングンと死銃は接近してきていた。恐らくは、接近してから確実に当てる方法に切り替えたのだろう。重々しい蹄の音は既に始めよりもかなり大きく聞こえるようになり、死銃のスカルマスクがはっきりと確認出来る。そのマスクの奥で……
「……っ!」
死銃が、歪んだ笑みを浮かべる気配が、はっきりと感じ取れた。
「あ、あぁぁ……!」
頭の中が、まるで沸騰するように熱くなる。腹の底で、滅茶苦茶な怒りが蜷局を巻く……
「出すな……!!」
「っ!?アイリ……?」
リョウが前を見ながら彼女に声を掛けたが、それはアイリの耳には入らなかった。
視界が真っ赤になる。気が付かない内に、ドアの固定具に手を掛けている自分が居る……
――コレが邪魔だ……――
――コレがあるとアイツを撃てない……!!――
遂に殆ど50メートル程の距離まで追い付いてきた死銃が、腰のホルダーに手をかけた。再び、あの拳銃を引き抜くつもりらしい。
キリトの牽制も、最早殆ど意味を成していない。右へ左へ、時には紙一重でヒラヒラとかわされていた。
そうして死銃の腰から、真っ黒な拳銃が覗いた……その瞬間、アイリの中で、何かが弾けた。
ハンヴィーの左後部のドアが、鋼鉄のぶつかる音と共に、中で何かが爆発するかのように開いた。
「なっ……!?」
「アイリ!?」
「私の友達に、手をダスナァァァァァッッ!!!!」
突如、アイリの破壊的な叫び声が両者の間に響
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