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メディスン・メランコリー 〜無名の丘〜
メディスン・メランコリー 〜無名の丘〜
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した。人形ではないスーさんは、きっと苦悶の表情を浮かべ、叫び、私に心地よい音色を届けてくれる気がした。それに、腕をちぎったり、背骨を折る時に、どんな音が出るのか楽しみだった。初めて自分で何かを想像出来た気がした。そしてこれは、なんとも愉快だった。帰ってきて、本当にそうする姿を想像すると、思わず顔がほころんだ。
しかし、この先、いつも通り視界で動かないのも違和感があり、迷惑だったので却下した。単純に私が困るからだ。
少しずつ自分の気持ちを理解出来てきた。結局のところ、置いていった罰に苦しめてやろう、とそんな考えだ。しかし、動かないスーさんが視界に収まっては意味がないのだ。殺しても動く方法が必要だった。同じような考えをぐるぐると辿り、結局のところ、許せないけど保留することにした。
気がつくと、涙を流していた。
これは罰することが出来ない悔しみの涙なのか、想像に浸ることによって流れた歓喜の涙なのか。どちらなのか私には難しかった。涙を拭って目を閉じたが落ち着かなかった。初めて感じる、なんとも言えない不快感だった。月の光ですら瞳を閉じても感じることができたので、私はうつむいた。今日は全てが憎らしかった。月の光も、草や鈴蘭の香りも、風や虫の音も、何もかもが。私は全てを消し去ってしまいたかった。全てが私の敵に思えてきた。その瞬間、様々な人間の顔が浮かんだ。誰だったかは覚えていない。ただ殺したいと思った。
不思議な体験だった。色々と考えるのが面倒になってきたので、瞳を閉じ、少しの間、私は再び眠りについた。

寝ていると、遠くの方で話し声が聞こえた。風の音ですら耳障りだったというのに。だった・・・?そうだ、今はそんなにイライラしてなかった。先ほどまでとはうって変わって、私は驚く程落ち着いている。そうか、私の心がどんどん広くなっていってるからかもしれない。
私は最終的にどれだけ器の広い人形になるのかと思うと将来が楽しみで仕方がないな、と思った。
色々と考えていると話し声はどんどん近づいてきた。上の方で、私に向けられた視線を感じた。私は目を開けて空を見上げた。何故か、いつもより少し体が動かしづらかった。そこには、2人の少女が飛んでいた。








  メディスンは私をスーさんと呼んだ。

  鈴蘭の妖精である私にとっては、嬉しい名前で、誰かから初めて貰った名前。

  私は最後の瞬間まで彼女の隣にいなければならない責任がある。私がそうしてしまったから。

  そしてメディスンに一人きりではないことをいつか伝えなければならないからだ。

  傍にいることで、メディスンが今まで背負ってきたものは、押しつぶされそうに私に流れてきている。

  日に日に、増していくそれは、次第に私の意識や行動すら奪っていた。

  罪の重
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