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メディスン・メランコリー 〜無名の丘〜
メディスン・メランコリー 〜無名の丘〜
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っていたと思い込んでいた。

 「スーさんは、最後に笑ってたよね?
  過去のことは忘れられないんだろうけど、きっと今が幸せだったから。
  だから、あなたに笑うことができたんだと思うの。そしてスーさんはあなたにも笑って欲しかったって。
  そう、思うの」

そうだ。私は今まで笑ったことがなかった。スーさんは私の前では常に笑っていたように思う。それは、言葉を喋ることが出来ないスーさんから私へのメッセージだったと思う。
私はその思いに全力で応えようと思う。
背後から死神が迫ってきているのが分かる。私を、私の中の悪霊ごと消し去ろうとしている。
悪霊は言った。私には感情も記憶も存在しないと。だけど私は信じたい。私は私の中の感情と記憶から、彼女達にこの言葉を届けたい。溢れ出そうな涙を堪えているけど、私は思ったことを素直に言葉に出した。

 「ありがとう、一緒にいてくれて。私は・・・・幸せだった、本当に幸せだった。
  出会えて本当に良かった・・・・。」

私から彼女に送る最初で最期の笑顔と、言葉だった。出来ればスーさんにも見せたかった。

そして次の瞬間、背後から死神の攻撃を受けた。

私の中の怨霊も、記憶も、感情も、全てが失われていった。

きっと私は元の人形に戻るのだろう。だけど、私は大丈夫だと思う。例え記憶に今までのことがなくても、スーさんと、私の持ち主が教えてくれた心までは失わない。そんな気がしたから。私はずっと一人ぼっちなんかじゃなかった。二人の温かい心が傍にいてくれたおかげで、私の心まで温かくなっていったから。私は二人が大好きだった。大切な思いが、心が、このまま途切れるとは思えなかった。人形のままでは、私はこんなにも愛おしく、切ない気持ちを覚えることはなかった。大切にされる幸せも、大切にしたいと思う愛しさの心も存在しなかったと思う。今まで見てきた景色にしたってそうだ。月の光や鈴蘭が綺麗だと思うこともなかったと思う。虫の声や、小鳥の鳴き声も今となっては私の心の中で綺麗に響いている。全てが美しく、輝きに満ちていたように思う。
私は、本当にそう思う。


暗い闇の中で、私は再び人形となった。

























     …〜 持ち主と死神 〜…










私の人形だったメディスンは倒れたまま動かなくなっていた。死神によると、死者選別の鎌で怨霊の存在と、その中に眠るメディスンの記憶も消してしまったという。
結局私は何もできなかった。遠巻きに眺めているだけで、彼女達に何もできなかった。死神はメディスンを抱えて、元の岩場に座らせたあと、言った。

 「あんたが悪いわけじゃないさ。それに何もできなか
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