メディスン・メランコリー 〜無名の丘〜
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ていた。私は空を飛んでいた。
怨霊の力で出来るようになったのかは分からない。
「妖精と同様に、怨霊と同化しちまってるねぇ。周りの悪霊を完全に集めてくれたことには感謝するが、
こりゃあ、お前さんごと‘無間の狭間’にでも直行で飛んでもらうしかないかもねぇ」
「死神・・・・。あなたは本当にスーさんを助ける気だったの?」
「さぁて。どうなんだろうねぇ。ただ、何故秋穣子を呼んだのか分かるかい?
鈴蘭畑は最初から消えてもらうつもりだった」
「そう」
「おーっと、その前に、あれを見てみなよ。今の矛先は人間だろ?だったらアレを見な。アレは人間の霊だ。
復讐したいのはあれの方じゃないのかい?それに今の私は生き仏だ。今なら見て見ぬふりをしてやるよ」
視線を下に落とすと、確かにいつもの岩の辺りに怨霊ではない人間の霊がいた。今までは人形だったので見えなかったのだろうか。意外と霊は僅かだがうようよしていたのだ。いくつかの霊が私に対して逃げていくのに対し、あの霊はずっとその場所から動こうとしていなかった。
あの場所は私とスーさんの場所なのに。私たちの場所を汚して欲しくなかった。
私と怨霊の意識は完全に同化していた。私達は人間が憎いという1点で完全に合致したのだ。死神の行動も許すべきものでは無かったが、何より人間が霊の姿であっても、あの場所にいることに怒りを覚えた。出来るだけ早く飛び、人間の霊を消滅させようと手を伸ばしたその瞬間だった。
「危ない!逃げて****ちゃん!」
秋静葉の声が一体に響き渡った。その声と同時に私の手が止まった。私は、その名前を聞いたことがある。私の記憶か、私の記憶じゃないのかは分からない。ただ、とても懐かしい名前で。愛おしい名前だった。
「・・・こえるの?私の声が聞こえるの?ねぇ――――メディスン」
メディスン。それは誰だろう。そう、私は・・・。この声の主、人間の霊の声を私は覚えている。いや、記憶に新しい。鈴蘭畑で最初に聞いた初めての声、私を起こしてくれた声、度々聞こえた優しい声。スーさんを人里に行かせないようにしていた声。そして、私の大切にしている記憶の中にある花火大会での、私の声。つまり・・・
「ずっとメディスンとお話したかったの!そしてさっきまでいたスーさんのこと・・・」
「あなたは・・・・私の・・・」
「持ち主よ。あなたの持ち主の****よ。・・・・やっと、やっと届いた」
彼女はずっと泣いていたのだろう。彼女の頬には何度も涙が通った跡がある。いつからだろう、いつから彼女はそこにいたのだろう。たった今現れたわけではなかった。それは分かっていた。私は彼女の声を幾度となく聞いているから。彼女は私を捨てたはずだ。なのに何故今ここでうろうろ
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