メディスン・メランコリー 〜無名の丘〜
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たのか。私は寂しかった。私を一人にしないでほしかった。
スーさんの残った大きな悲しみの前に私は一言呟いた。
「そっか。寂しかったんだね。でも大丈夫。もう大丈夫だから」
スーさんの思いが痛いほど流れ込んでくる。スーさんの悲しみが、絶望が。
今まであったことを思い出しながら考えてみる。私は、ずっと一緒に誰かが居てくれたから、寂しく思うことはなかった。
私が意識を持ってから、ずっと隣にはスーさんがいてくれたから。居なくなった時の感情を思い出すと、今ならそれをハッキリと理解できる。私はただ、・・・・・・・寂しかったのだ。
その何倍もの時間、スーさんは一人ぼっちだったのだ。ずっと、ずっと一人だったのだ。そして寂しさは募り、あまりにも大きな心の隙間は、怨霊を入れる器となってしまった。私は今のスーさんの、この感情を背負ってとても笑顔でいられる自信がなかった。スーさんは私に対してずっと微笑んでくれていた。それは心開ける誰かと一緒にいれる嬉しさと、私に対しての優しさだったと思う。
私はスーさんのことなんか何も分かってなかった。心の中で、深く謝罪し、感謝した。
私は涙を流しながらスーさんの体を手で包み込んだ。これ以上、スーさんが悲しまないで欲しいと思ったからだ。
振り撒く毒と、怨霊を私の中に入れてしまおうと考えた。私の中に、全て入れてしまえば、死神が私を始末し、スーさんはこれからも生きていけると、そう思った。元々、心も感情も持たない人形の私が、信じられる唯一の記憶。それはスーさんと共に過ごした日々だ。私のスーさんに対する思いだけは、決して誰のものでもないのだ。スーさんの記憶の中に私が残ればそれでいいと思った。
そう決心した瞬間、スーさんの体が少しずつ消えていった。少しづつ、見えなくなっていた。私も少しずつ体が動かなくなっていた。
どういうことか分からず、慌てて辺りを見回してみると、秋穣子が鈴蘭を枯らしていっているようだ。彼女は大地の力をコントロール出来ると聞いたことを思い出した。
止めて!と声に出そうとした瞬間。スーさんは首をいつものように横に振ったのだ。
最初からこのつもりだったのだと私は気づいた。
思い返してみると私が怨霊に憑かれていないときは、私は変な事を考えなかった。それは必ずスーさんが一緒にいた時だ。最初から私に怨霊が憑かないように、身代わりになってくれていたからだ。私がスーさんの身代わりになろうと決心するずっと前から、スーさんはすでに私の代わりに苦しんでくれていたのだ。結果、里の人々を苦しめてしまったのに。
スーさん自身には里の人々に対しての恨みなど一切なかった。あれだけの人間の行いを許していた。自殺や捨て子の場所となった鈴蘭畑では人間の醜さをどうしても垣間見てしまうのに。なのに、消えていく命と共に悲しんでいた。同じ状
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