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メディスン・メランコリー 〜無名の丘〜
メディスン・メランコリー 〜無名の丘〜
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のか。それはきっと。きっとスーさんが代わりに背負ってくれていたからじゃないだろうか。私が完全に怨霊化する前にスーさんが身代わりとなって、怨霊を引き受けていてくれたから、今まで私は心を維持できたのかもしれない。スーさんを探していたとき、鈴蘭畑から出た私は動けなくなった。つまり私もスーさんと一緒で鈴蘭から力を与えられてるかもしれない。スーさんが私から怨霊を背負い、私に力を分け与えてくれたように、私がスーさんの怨霊を受け止めることが出来るかもしれない。全ては推測の域でしかないけど、私に今出来る事は一つだった。
私が目を覚ました時に、スーさんは私に触ってくれていた。だから私は。近づくにつれ、様々な言葉がこだまする。誰かの記憶だろうか。鳴き声や、怒りの声、悲しみの声、他にも色々な声が聞こえる。

 「やめ・・!まだ・・・!仕方な・・おい・・秋・・・鈴蘭を・・・!このままじゃ二人・・・!」

死神が何か言っているようだが、怨霊の声でほとんどがかき消されていた。私は立ち止まるわけにはいかなかった。何を言われてもスーさんを助けなければならないのだ。いかなる言葉にも耳を貸してはいけないと思った。
私は、今の私の意思でこの道を選んだ。私はスーさんを助けたい。また戻らなきゃいけない。あの場所に。ずっと私と一緒にいてほしいから。スーさんを手で包み込んだその時だった。

  寂しい。

怨霊の声じゃない。私の声でもない。これは、初めて聞く声、これはきっとスーさんの・・・

  寂しいから。一緒にいたい。寂しいから、助けたい。寂しいからまた戻りたい。寂しいから・・・

また、誰かの記憶が流れ込んでくる。もう分かっている。この感覚の記憶は私のものではないと。
これは、スーさんの記憶だ。確信を持てた。

遠い、遠い昔の記憶。この鈴蘭の草原で、沢山の妖精がいた。妖精たちは、外敵から守るために鈴蘭を増やし、仲間を増やしていった。
皆喋ることはできなかったけど、争いも無かった。皆が皆幸せそうだった。私も幸せだった。ある日、一人の男が鈴蘭を調達しに来た。
贈り物として少量相手に渡すことは私達妖精にとっても誇らしかったので、私達は黙っていた。しかし、鈴蘭は悪用され、人里で何人か毒殺された。人間は私達の仕業だと考え、問い詰めてきた。しかし、私達妖精は喋ることが出来なかった。犯人はその場におらず、結局鈴蘭は焼き払われてしまう。
私達は苦しんだ。元々鈴蘭の妖精である私達は、鈴蘭がなければ存在を保てなかった。
私が目を覚ました時には、その場には私しかいなかった。どれくらい経ったのかわからないほど、時間は経過していた。わずかに残った鈴蘭が、私を生かしてくれたのだ。私は、言葉にならないほど絶望した。何故、私も一緒に仲間たちと消し去ってくれなかったのか。どうして私だけ残し
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