メディスン・メランコリー 〜無名の丘〜
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急いで光の方へ向かった。徐々に見えてくると、そこは私たちのいつもの場所だった。
死神が戦っていた。その相手は、スーさんだった。
「おや、見つかっちまったのかい。しくじったねぇ」
死神は器用に弾幕を躱しながら言った。私は混乱した。まさか本当に騙されていたかもしれない。
「博麗の巫女は!怨霊を払うんじゃないの!?」
「交渉はしないことにした!この妖精を見に来てみると、もうそれどころじゃあなくなっちまったのさ!
周りの様子を見てみな!あれこれ言う前に確認しておくれよ!」
私達は辺りを見回してみると、ここ一帯にすずらん以外の命は残っていなかった。周りにあった僅かな木も枯れてしまい、様々な動物の死骸が転がっている。元々の風景が分かる私からすると、とても一緒の土地とは思えなかった。ここにはもう、生命の生きる意思すら感じない場所になってしまっていた。ただ、鈴蘭だけが不気味に強く咲いていた。その鈴蘭は、私たちがいつも眺めていた姿のものではない。
今は不自然に周りに毒を撒き散らしているだけの存在となっていた。これをスーさんがやったのだ。私たちの思い出の場所を、スーさん自らが汚している。
今の私にとっては唯一の故郷とも言えるこの場所が、みるみる朽ち果てていくことに悲しみと、深い怒りを覚えた。スーさんはどういう気持ちで、・・・・いや、違う。ここにスーさんの意志はどこにもない。スーさんの表情を見れば分かった。あれはもうスーさんではなかった。周りの様子に歓喜し、次々に毒を撒いている姿は、私の知ってるスーさんと一致しなかった。何よりも、その瞳の奥は、やっぱり悲しいままだったから。だとしたら、今スーさんを動かしているのは他の意思だ。私はこの悪意に満ちた気配を知っていた。私の体の中に入ってきていたものだ。スーさんを動かしているもの、それは怨霊だ。
「異常事態ってやつさ。これ以上広まっちまえば異変になっちまう。
これはもう残念だけど、消させてもらうしかないねぇ」
「待って!」
「何する気だい!完全に相手は怨霊の傀儡になっちまってるんだ!」
私はスーさんに向かって走り出した。毒の影響は私にはそれほど受けていない。いや、私の仮説通りなら受けるわけがない。
人形の私には本来見えない怨霊が何となく視覚出来る、それはもうおびただしい量さまよっていた。その中心点にスーさんがいる。私の心に隙間を作ってしまえば、一瞬で乗っ取られてしまいそうだ。近くにいくと、スーさんは微笑んでいた。いつものように。だけど、いつも通り、いや、いつも以上に悲しい目をしていた。それを見て私は思った。まだ、スーさんの中にスーさんの心がいる。もし誰かがスーさんを救えるのなら、それは私しかいないと思った。私が怨霊に何故今まで完全に取り憑かれていなかった
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