メディスン・メランコリー 〜無名の丘〜
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問題でしかなかった。結局の所、どうでもよかったからだ。
私はからっぽだった。
だから何も感じない、何も思えないのだと私は思った。
分かることは昔教えてもらった知識と僅かな記憶だけだった。
ただ、ゆっくりと時間だけが過ぎてゆく。
暫くすると空がみるみる色を変えていく、深く青い空の色は次第に明るさを持っていった。朝日が私の世界を包み込んだ。あまりの眩しさに目を眩ませたが薄く開いた瞳は沢山の色で鮮やかに色づいた世界を捉えた。小鳥が鳴き、朝日の光が私の体を包み込んだ。少しずつ、温かくなっていく。全てが初めての事だった。目の前の光や色の眩しさに目がくらんだ。驚くほど青くなった空は、強すぎる光と共に私の瞳を圧迫していた。鳥たちの囀りも不規則に響いている。
私は本当に、ただのお人形だった。
それらを見ても何も思わなかった。思えなかった。過去見てきた色々なお人形も、私も、無感情にただ座っているだけだった。記憶を手繰ると人形も周りには私が居て、他のお人形の周りにも私はいた。でも今は周りには誰もいない。独りぼっちのお人形だった。動けない私と同じように近くに咲いている鈴蘭も地面ばかり見ていた。鈴蘭も私と一緒だった。自由に動くことが出来ない。風が私の髪をなびかせ、ただその場に座り込んでいる事しか出来なかった。
もう一度ゆっくりと瞳を閉じて眠りについた・・・。
その夜、私は初めて夢を見た。いや、これが夢なのかは分からない。これは遠い記憶なのか私の想像なのかわからない。私は今いるこの場所から、ひどく冷たい目をした“人間”を見ていた。同じような人間を何度も見たことがあった。これは既視感というのだろうか。記憶の奥にある気がした。その人間は布で包んだ私を地面に置き、去っていった。私にはどういうことなのか分からないが、私はやっぱり動くことが出来ず、瞳を閉じる前に見た景色と同じ景色を見ていた。このまま目を閉じると、もう動かなくなるような、そんな気がした。
――――起きて。起きて。
目の前に誰かがいる。目をつぶっていてもハッキリと分かる。私はこの声の主を知っている。ただ、思い出すことは出来なかった。また日は沈んだようで、目の辺りにかかる重圧は消えていた。代わりに、うっすらと発光した何かが目の前にいて、私の手を触っているのが分かる。
「あなたは・・・?」
驚いた。思いが言葉になった瞬間だった。初めて聞いた自分の声は弱々しく、小さな声だった。返事は無い。
少しずつ重いまぶたを上げると、夜空には多くの流れ星が流れている。何度か見たことがあったが、以前とは比べ物にならない量が流れている。視線を下へ向けると、星に照らされる鈴蘭のようにぼんやりと光り輝いている小さな何かがいた。金色の髪の毛に、小さな体に深い紫色のドレスを着ている。まるで
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