第一物語・後半-日来独立編-
第十九章 無意味な会議《2》
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「美琴か」
自分の名前を呼ばれた。
だが、その言葉に違和感を感じた。
意思はあるが、心がここには無いようなそんな感じがした。
戸惑いながらも、声を胸から出した。
「おみまいにきた。みんなはね、しゃこういんとかいぎしてる。ひらいのこんごをはおうかいとしゃこういん、どっちにたくすかの」
「あいつらなら心配ない。必要があれば助けを呼ぶさ」
やっぱりおかしい。まるで操られている人形のように冷たい感じがする。
告白が失敗して落ち込んでいるのか、最後に宇天の長に会えなかったからだろうか。
美琴は思い出したように、抱いていた花束をセーランに見せる。
「はなたばもってきたの、かびんにいれとくね」
「……美琴」
冷たい声で呼ばれた。
「なに……?」
「手紙、持ってきてないか」
「もってきてるよ、よくわかったね。……よむ?」
花束を近くにあったテーブルに置き、ポケットから飛豊から渡された手紙を取り出して、手が届くように近付けた。
日差しが眩しく、逆光となっているので表情は確認出来なかった。
目が見えないわけではないので、顔を近付けたり雰囲気や呼吸の仕方等で相手の表情や感情は理解出来る。
自分に向けられていた視線が、顔から手紙へと移って行き、手に持った手紙が無くなった。
互いの呼吸の音が聞こえる空間に、紙を広げた音が加わる。
黙ってそれを見ていた。
音から確認するに紙は一枚だけで、文が執筆されているであろう紙をそのまま渡された筈だ。結果、読むにも然程時間は掛からず、下を向いたセーランの顔が上に向く。
「美琴、中等部のときのあの場所覚えてるか?」
あの場所、と言う言葉で理解は出来る。
頷き、
「おぼえてるよ、あそこがどうかしたの?」
「待ってる」
そう言われた。
どう言うことか、確認しようとセーランに問うよりも早く、ベッドの上にいるセーランは動いた。
自身の左手を横に出した。美琴は出された手を自身の両手で包み込むように触る。
……っ!?
触って気付いたことが三つ。
一つは、温かい筈の体温が飛豊には冷たく感じた。もう一つは、骨格や内臓などの身体の至る部分が作られたものだと言うこと。
それらは踏まえて、最後の一つ。
これはセーラン本人では無いと言うことだ。
ここにいるのは本人では無く、作られた人形だった。
光の無い瞳で、人形は静かに笑った。
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