第一物語・後半-日来独立編-
第十九章 無意味な会議《2》
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で、日来を監視し黄森の地に立っているのだろうか。
疑問に思ったが、本来であれば今はそれを問うときではないのだがそれを口にした。
「すみません。たいいんさんは、ひらいがきらいですか?」
言ってしまった。
何故か急に恥ずかしくなって、頬が熱くなる。
「な、なんでもない、です。わすれて、ください……!」
体を振り、先程の言葉を気にしないでと伝える。
気に触ってしまったのだろうか。彼方は無言のままで、何も行動を起こさない。
口にしたのが間違いだったのか、そう後悔する。
それを見ていた隊員は、笑みを漏らした。
「怖がらなくても平気だよ。私は他人に力を振るえる程強く無いから」
「……え?」
「私にはね、嬢ちゃんくらいの子がいるから君の感じてることを勝手に想像するくらいは出来る」
自分の父親と同じ笑みと、温かみを感じる。
子がいるということは、自分の前に立っているのは父親だろう。
「日来のことは嫌いではない。関係の無いことだけど私の妻は元は日来出身でね、今回の件については妻共々複雑な気持ちなんだ」
彼らも自分と同じ人なのだ。思いに違いはあれど、感じ方は同じ部分が存在する。
こんな優しい気持ちがもっと広まればいいのにと、美琴は心の何処かで思った。
その時だ。上の者に確認しに行った隊員が戻って来た。
「仕事中にあまり日来の者とは関わると後が大変だぞ」
「何を言ってるんだ、バレなければいいんだよ」
「それ、よくないとおもう。ばれなくても、だめなものは、だめ! まずは、じぶんのみのあんぜんから」
「ほら、少女の方がアンタよりも大人だな」
「これは参ったな」
彼らとは解り合えるような気がする。
感じながら、隊員から言葉が飛んだ。
「三分だけだが、その間ならいいそうだ。なかには監視用に映画面|《モニター》が表示されているが、それには触れないように。緊急警報が鳴るようになっているからね」
頷き、下がった花束を上げる。
背後から見えないように隠しながら隊員に小さく手を振り、隊員は頷くことで返しとする。
優しく扉を開けて、病室のなかの空間へと入って行く。
病室内は廊下よりも温度が少し高かった。
音の反響で、病室のなかにあるものを確認した。
なかには置物や着替えがある。そして入って来たドアの上に、一つの映画面が表示されている。
隊員が言っていたものだ。そこには監視中と言う文字が表示されている。
窓際には花瓶に入れられた花と一つのベッドが置いてある。
そこに一人の者が上半身だけを立てて、窓の向かうの景色を見ていた。
「……セーラン」
美琴はその者の名を呼んだ。
小さく弱い声に、ベッドに載るようにいるセーランは顔を見ていた景色から離した。そのまま顔をこちらに向け、笑った。
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