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王道を走れば:幻想にて
第6章、その1:束の間の癒し ※エロ注意
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もったいないから捨てませーん」

 『ぺしっ』と、小気味良く白い骨がユミルの頬を叩いた。パウリナが嬉々とした表情をしながらステップを刻むように数歩離れ、再び近付いて反対の頬を叩く。非常に優しい一手であり、余計にイラつくものであった。

「私の初釣り祝ってよー」
『ペシッ』
「さぁさぁ御主人カモンカモン」
『ペシッ』
「恥ずかしがらずに言っちゃってー」
『ペシッ』
「ふんのぉあぁあっぁっ!!」

 裂帛の手刀が骨を捕え、それを半ばから叩き折った。吹き飛んだ破片が『ああああっ!』という悲鳴を背に、陽光を浴びてきらきらとしながら、森の絨毯や川岸へと軟着陸する。
 パウリナは手に残った欠片を握り締めながら抗議する。

「も、もうっ!御主人の馬鹿!幾らなんでも酷いですよ!」
「あのな。俺達が釣ろうとしているのは生きた魚だ。それで焼き魚を食べたいと言い始めたのはお前ではないか」
「で、でもですよ!でもだからといって釣ったものをいきなり折るなんて!御主人って本当に、馬鹿!」
「お前、アレを食べたかったのか?あの得体の知れない白い骨を」
「・・・記念にピアスでも作ろうかなって」
「やめろ、馬鹿。お前にはもっと華美なものが似合う。真珠とか、宝石とか。あんな粗末なものを付けるなど俺は認めん」
「そ、そうですか?そっかぁ・・・華美なものかぁ」

 途端に機嫌をよくしてにへらと顔を緩める相方に頸を振りながら、ユミルは木桶と竿を持って踵を返す。パウリナも己の木桶をもって彼の後を追った。二人の桶を合わせてざっと十数匹といったところか。これならば人数分は足りるであろう。

「ケイタク、今戻ったぞ」
「戻ってきましたー」
「あ、お帰りなさいですー。わあーっ」

 小川から二、三十歩ほど歩いた場所で、腑抜けた声と共に慧卓は宙を回転する。蓑虫のように縄で身体を巻かれ太い木の枝に吊るされており、それをエルフの子供達が好き勝手に回している。やる方も愉しげであり、やられる方も満更ではない表情をしているのが奇妙な光景であった。

「こいつはそんなに愉しいか?回してるだけなのに」
「うん!なんか面白いっ」「ねー。変な声出すしねー」
「・・・との事だが」
「別にいいんじゃないですかぁー。愉しんでもらえるならそれはそれでぇー、文化交流ですしぃーおすしぃー」
「・・・こんな展開になるなんて思ってもみなかった」
「ま、まぁ仕方ないですよ。なにせケイタクさんですから」

 木に寄り掛かりながら、キーラは歯噛みするように言ってのけて、リコは苦笑を浮かべて慰めた。賢人キ=ジェの村にて帰還した慧卓を待ち受けていたのは、心配を募らせたキーラの説教であった。もっと早く帰ってくれといわれてもどうしようもなかったのだと言い訳をし、慧卓はついうっかりと剣
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