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王道を走れば:幻想にて
第6章、その1:束の間の癒し ※エロ注意
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当然か」
「ええ、あいつのお兄さんとは正反対よ」
「・・・兄、か。ああ、そういや此処で孤児院を開いていたんだっけ。あいつの話に出てきたな」
「ええ。私は彼のお兄さんとは寝た事は無いんだけどね、でも何度か話した事があるわ。町の市場とか、図書館とかで」
「へぇ。どんな人だった?」
「凄く真摯な人よ。あんなのとは比べようも無いくらいにね。その上、あの人には魔術大学に御友人が居て、一緒に魔術の研究をするくらい頭がいいの。一度会って驚いてみなさい」
「なるほどね。君の言葉に偽りがある訳無い。機会があれば会ってみよう。・・・だが今夜はこのままだ、いいね?」
「ええ。少しこのままでいさせて。凄く心地いいから」
「ああ、俺に身を委ねておけ」

 瞳を閉じて女はミシェルの胸に顔を埋める。情交の時と比べてとても静穏な様であり、一介の娼婦とは思えぬほど輝かしさを感じる微笑であった。ミシェルもまた小さく笑んで、静かに瞳を閉じる。
 女の臀部から汗が垂れて、肌を伝ってシーツに染み込んだ。荒みつつある時勢の中に感じる、一滴の清涼な水であった。



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 きらきらとした太陽の煌きが穏やかな清流に反射し、さながら鏡のように空の青さ、そして枝に繁る葉の鮮やかさを映し出していた。その透明感ゆえか、川底の石や水を泳ぐ小魚まで見えている。森の内を流れる小川の底は浅いが、自然が命を育むに非常に適した場所でもあった。水のせせらぎが川面を挟む森の中へ、風鈴のように清らかに流れ込んでいる。
 そんな中、川面へ一本の釣り糸を垂らす狩人がいた。垂れ眉を神経質そうに顰め、その動静を見極めている。不意に、釣り糸の先にある餌に、小魚かぱくりと食いついた。

「っ!来たか」

 竿越しに手応えを感じてその男、ユミルは一気に竿を引き上げる。水飛沫が巻き上がる中を小魚は飛来し、構えられたユミルの手の中にすぽりと納まった。突如として身体を包み込む外気に魚は苦しみ、手の内で一気に暴れる。

「良し、そのままだ・・・そのまま・・・」

 ユミルは慣れた手付きで魚の口元から針を外すと、水を張った木桶の中に魚を落とす。桶の中には既に十匹程度の魚が詰め込まれていた。漸く安堵の息が吐けたのか、新しき魚は悠々と桶の中を泳ごうとしたり、仲間と肌を触れ合ったりしていた。

「・・・うむ。小振りながら、いい肉付きだ。焼けば旨かろうな」
「御主人っ、御主人!私も釣れましたよ!おっきいです!」
「ほう、そうか。見せてみろ」

 相方がユミルの眼前に釣ってきた物を突き付け、ユミルは固まる。そもそもそれは生きてすら無い。ただの白く太い骨であった。

「・・・パウリナ。あのな、それは魚とはいわん、骨だ。しかも人っぽい骨。捨てろ」

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