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王道を走れば:幻想にて
第6章、その1:束の間の癒し ※エロ注意
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てもう一度考えてみろ』とな」
「ははは・・・」

 不敬罪につき斬首確実の冗談に慧卓は微苦笑を漏らすより何もできない。話を続けるために何とか話題を逸らす。

「しかし魔獣が来るとは、同情致します。何せ今は緊張の時勢。東は武器を突き付けあい、北と南では畑での収穫、西では魔獣の襲来。全てが全て、とても重要であります。いやぁ、イル殿はとても多忙でいらっしゃる。全ての問題に対して遍く手を回さねばならないとは。為政者の鑑です」
「はは、私は梟の頸を持っているのだ。どの方角にも頸を向けられる。身体をここに落ち着けたままな」
「なるほど。その上兵の数にも恵まれておりますな。四方の事情全てを解決せんと、森の者達を動員されていらっしゃるのだから」
「うむ、そうだとも。支持者が多いのだ、私には」
「ええ。きっと特別な支持者なのでしょう、その方々は。もしかしたら将来は別の要望も持ち込んでくるでしょうな。『今度はうんたらかんたらをしてくれ、早くしろ』とね。ハハハ」

 からからとした笑いをして、老人の顔をちらと見遣りながら言ってのける。イル=フードは一瞬目の下をぴくりとさせて、俄かに遅れてから言葉を返した。

「うむ、そうに違いない。だがそれらを解決するのが我等為政者の務めでもあり、義務でもある。人の上に立つ者は配下や支持者達の問題を変わって解決せねばならんのだ。それが平穏の構築ともなり、ゆくゆくは我等の支持にも繋がる」
「なるほど・・・若輩ですので、覚えておいた方が良さそうですな。とても勉強になります」
「覚えておくがいい。自らを律する勇気を持つという事を。そして下の者達を統率するという手段は幾多もあるが、一番手っ取り早く、それでいて離反されやすいのは金銭だ。未来の為政者なのだから、それは覚えておくがいい」
「・・・ええ。とても生々しい御話ですが、覚えておくに越した事はなさそうですね。でも私は出来れば金銭は使いたくありません。自分の実力の無さを思い知るようで」
「・・・そう、だな。そういう見方もある。・・・年を取れば現実も見えるのだが、貴殿にはまだその考えは不要かもしれん。色々と経験を積むといい。何れは地に確りと立つ、大樹となるかもしれんからな」

 先までの生気を感じる声色が俄かに潜る。そのにこりともしない表情に慧卓は何か感じるものを抱きつつも、その場では特に追求する事はせず、会話を続けていった。エルフの長との会談は二時間程度ではあったが、彼にとって有意義な時間であった。
 帰り道、東に傾く木陰を踏みつけながら慧卓は考えを巡らす。考えているのは、冗談を言った時に浮かべたイル=フードの顔、そして彼の反応であった。

(どうにも怪しいな。短絡的に考えるのはアレだけど、あの時、一瞬返事が遅れたのは奇妙に感じた。・・・でも答えに窮しただけって
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