第6章、その1:束の間の癒し ※エロ注意
[16/19]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ら使わないってのは、流石に疑わし過ぎますね」
「・・・」
「まっ、とりあえず行って来ますね。何と無く怪しい感じがするし」
「気をつけて下さいね、ケイタクさん」
「ああ、行って来るよ」
慧卓はそう言って、擦違い様にアリッサをじっと見詰めながら家から出て行く。アリッサはその視線に気付き、去っていく彼の背中に見入っていた。慧卓が居なくなるのを機に、キーラが確信めいた表情で問う。
「アリッサさん、一つ聞きますけど」
「なんだ」
「ケイタクさんの事、どう思うんです?」
「・・・質問の意味が分かりかねる」
「では、はっきり言います。あの人の事、異性として意識しているんでしょう?」
「っ!?!?」
アリッサは瞠目して見返す。胸に燻っていた思いが一気に色付くのを感じて、羞恥にも似た奇妙な思いが心を焦がす。言われた事の意味を直ぐに理解できた。慧卓の事を少なからぬ思いで好いているという事だ。
「き、キーラ殿は随分と思い切った事を仰せになるな・・・」
「・・・王女様と同じ眼をしてましたから」
「コーデリア様と?」
「・・・・・・純粋な目でしたよ、凄く」
不機嫌なままにキーラも家を出て行った。残されたアリッサは赤く色付いた頬を抑えながら、藁椅子に座り込んで俯く。胸の鼓動はどくどくとして勢いは弱まらず、耳の裏にまでその音が響いているように感じた。
(・・・私はケイタク殿が好き、なのか?)
『好き』。内心でその言葉を反芻すると、不思議と彼女の心が火照ってしまう。名も知らぬ蟠りの実態が見えたようで、すとんと胸に収まってしまうのだ。ほぉっと零す溜息は深い。一体どうしてしまったというのだろうか。この胸の煩いを恋と呼称し、慧卓に淡い想いを抱いているというのならば、何が切欠となったのだろうか。納得し得る明白な理由が思い当たらず、キーラは懊悩を抱えて目を閉じる。悩める彼女に声を掛ける者は、ここには居なかった。
一方で家を出て行った慧卓は、再び川辺へと赴き、そこでイル=フードと話し込んでいた。昼下がりの穏やかな川岸を歩く。
「またこうして話し合える機会が出来て嬉しく思うぞ、ケイタク殿」
「私もです、イル殿。しかもこうやって川辺を歩きながらとはね」
「お気に召さなかったか?」
「いえいえ。先程此方に川釣りに来たばかりでしたので、少し可笑しく思えて参りまして」
「そうか」
小さく笑んでから、イル=フードは話す。
「キ=ジェの使いから聞いたのだが、もう既に私を含めて四人の賢人と会ったらしいな。中々に手が早い事だ」
「いえいえ、これでも遅いと思っておりますよ。キ=ジェ様やシィ=ジェス様の場合は近場ゆえに簡単に行けましたが、他の方々は全て東方に、しかも軍事的に緊張している地域に御住まいです。とて気軽に行
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ