第6章、その1:束の間の癒し ※エロ注意
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ると分からない情勢なのに、軍属でもない男が家庭を、しかもたかが獣狩りのために数週間も放ったからしにするなんて馬鹿げてる。それに今は丁度作物の収穫期だ。男手が必要とされるのにそれを減らしてまで行かせるなんて、余程の事情じゃなきゃ出来ないね。それはあの人だって分かっている筈。でもあの人はそれを実行した。実行せざるを得なかった。
俺の私見だけどさ、あれは自分から望んでやっているとは思えないんだよ。民草の反感を買う軍事行為なんて、内政的には何の利益にもならない。・・・イル=フードは誰かに命令されているのか、それとも依頼されているか。どちらにしても、あいつの裏には何かいるな」
「大した推測だ。それこそ邪推ではないか?」
『!』
家の入り口からアリッサが厳しい顔を出してきた。自分の家、借りたものではあるが、を掃除し終わったのであろう。
「アリッサさん。お帰りなさい」
「ああ。今度は私も川釣りに混ぜてくれよ?少し寂しい思いをしたからな」
「・・・だったら最初から乗ってくればいいのに」
「そうですよ。『疲れを癒すがいい』だなんて言っちゃて。貴女だって同じ立場なんだから、一緒に愉しめばいいのに」
「何か言ったか?」
「素直じゃないって言っているんです、アリッサさんは。昔みたいに女の子らしい口調に戻ってくれればいいのに。そっちの方が俺、好きですよ」
「う、煩い!・・・あんなのは見せられん・・・も、もう一度見たいというなら、二人の時が、いい」
「そ、そうですか・・・じゃぁ、今度、いつか」
俄かに鼻に突くような甘い声であり、慧卓はたじろぎつつ返事を返す。気まずげに二人は互いを見ようとするも、視線が噛み合うのを機に再び目を逸らす。よく見れば両者の頬がどことなく気恥ずかしげな薄い赤に色付いているではないか。
どことなくそわそわとしてアリッサは所在無さそうに己の指先を弄るのであるが、その仕草を見て、キーラは一抹の予感めいた不安を抱く。恋を煩う少女特有の鋭敏な感覚は、目の前の女性のその態度が、己のそれと同じであると告げている。俄かに不機嫌となった彼女は態とらしく咳をした。
「・・・ン''ンッ!!」
『!!!』
「あ、ああ・・・イル=フードであったな、うん。私とて確かに疑わしく思ったぞ?だがケイタク殿、貴方は先日魔獣の群れと邂逅したのであったな?」
「は、はい」
「その時、同伴していた少年がその事を告げて、これを受けて討伐部隊を召集して派遣したと考えれば、自然であろう?」
「・・・だったらニ=ベリ殿の私兵を借りれば良いのに」
「面子に関わるだろう、それは。政治上敵対する相手の手を借りるなど」
「それでも態々派遣したりします?キーラが聞いた子供らの話によれば、派遣されたのはただの農民や狩人だって聞いてるんですけど。本物の兵士す
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