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王道を走れば:幻想にて
第四章、その5の3:青き獣
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に喰らいつくのを見てその要らぬ覚悟は消える。

「っぐああああっ、は、離れろぉっ!!」

 青い影、即ちミカが噛み付いたのは剣を握った手である。空いた手で幾度も顔を殴るもミカは一向に離れず、男の肉肌を噛み千切ろうとする。遂にはミカの膂力に負けて地面に引き倒されて、その首筋を貪られ始めた。
 目前であっという間に三人の仲間が殺されていくのを見て、他の者達は怖気づき、互いを見合わせて徐々に集まり始める。駆けつけたパウリナと少年が慧卓を立たせた。

「ケイタクさん、何やってるんです!ほら立って!!」
「あ、ああっ!!」

 立ち上がった慧卓を守るように

「ユミルさんはどうなってるんだ!?」
「御主人は・・・居たっ、あそこっ!!」

 彼女が指差すのは慧卓らが出てきた場所は別の出口である。岩を飛び越えて俄かに小高くなった場所に陣取って振り返ると、後から続いてエルフが迫っているのに気付いたようだ。互いに鋭く剣戟を交し合いながら、徐々に慧卓らから遠ざかっていく。 
 彼の後から更に二人の男が出てきたが、一方は左腕は大きく裂けて出血している。二人は息も絶え絶えに、ユミルと対峙する男に言う。

「アイ=リーン、もう逃げよう!森でもう6人やられた!!」
「残ってるのは俺らだけだっ!早く逃げないとあいつらがっ!」

 ユミルと鍔迫り合いをしながらアイ=リンと呼ばれた男は言う。

「だ、黙れっ!一度決めたらやるんだ!そうだ、やるんだ!!皆、殺せぇっ!」
「お、俺はやらないからなっ!」
「ふざけるな!ソツ様への忠義はどこにやったぁっ!?」
「俺は給金さえ貰えればいいんだっ!今まで昔の誼でやってたが、こんな目に遭うなら初めからーーー」

 そう言おうとした瞬間、背後から二人の間を裂くように一匹のラプトルが軽く跳躍して乱入してくる。慌てて空を裂く鉤爪から逃れて、二人は互いに言い合う。
 
「お、落ち着けっ!一匹突出しただけだっ、取り囲んで殺せぇっ!」
「そ、そうだっ!こいつだって獣なんだ!剣で殺せない訳が無い!」

 森の動静を見るまでもなく二人はそう決め付けて青い獣を斬り殺さんと迫る。余裕を欠いた一撃を上段から見舞うがあっさりと避けられ、続いた刺突も避けられる。もう一方の男がタイミングを合わせて切り掛るが、青い肌を浅く裂いただけに留まる。薄く滲んだ血に獣はたじろがず、ただ男達を見据えるのみ。まるで歯牙にもかけぬ虫を見る目付きである。
 その態度は彼らの心中を更に激しきものと変じさせた。最早己の疲労を考え切れぬ危うい剣閃を見舞っていく始末であった。傍にいる仲間の事を考えたものとは思えない。闇雲な一振りは空を斬り、たまに青い皮膚を剣先でなぞるだけである。

「こ、このっ、当たれよっ!」

 ひょいひょいと、軽妙
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