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王道を走れば:幻想にて
第四章、その5の3:青き獣
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。その瞳の持ち主は同胞を倒したそれと同じ青い肌をしており、その巨大な大口を開けて鋭く尖った犬歯を見た瞬間、男は漸く、それがラプトルと恐れられる魔獣であると悟った。

『あっ、あああああああっっっ!?!?!?』
「!!みんな走ってっ!!!」
「お、おいちょっと待て!?」

 森を走る悲鳴に呼応して、パウリナが即座に鋭い声を出して疾駆する。慌てて慧卓らがそれに追従して湿った絨毯を駆けていく。この時点において、アイ=リーンらの奇襲をかけて襲うという目論みは崩れ去った。

「な、何が起こった!?」
「くそっ、なんだってんだ!?もういい、全員抜刀しろ!!あいつらを殺せぇぇっ!!!」

 つんざめく二つの断末魔の重奏を背に男達は抜刀し、鬼気迫る表情で獲物へと迫っていく。彼らの前方に居たユミルは右手に短剣を持って男らの姿を睨む。

「来たか」

 得物を隠し、森の出口へと歩きながら、真っ先に自分へと近付いていく男を見据えた。両手で剣を振り上げて蛮声を吐き捨てる様は、死兵の如き苛烈さである。男は剣の距離に背を曝しているユミルを捉えて、一気に剣を振り抜こうとする。 

「おおおおおおっ!!!」
「しっ!」

 ユミルは素早く振り向いて自分から迫る。剣を握る相手の拳を受け止めながら、その喉首へ一息に短剣を突き刺した。獲物を振れず困惑する男から血塗れた剣を引き抜き、次に来る男に向かってその剣を投げつける。円を描いて飛来するそれを敵は身を屈めて避けるが、ユミルの抵抗よりも後ろから段々と、それも俊敏に近付く幾つもの青い影に動揺しているようだ。

「おいっ、あの青いのはなんだっ!?」
「ら、ラプトルだっ!!ラプトルの群れが後ろにぃぃっ、ああああっ!?」
「くそ、ジャンがやられた!!おい、どうしてこうなってるんだよ!?なんでラプトルが後ろに!?」
「俺に聞くな!生き残りたきゃ全部殺せぇっ!!」

 意外なる前方の敵の強さと後方の青い猛禽の群れに挟まれて、半ば自棄となりながら男らは更に迫っていく。背後から次々と走っていく断末魔と血肉を裂く音に、恐怖を抱いてしまったのだ。ユミルは葉陰に身を走らせてから木陰へと身を移し、新たな短剣を逆手に持って身構える。そして素早き足音が間近まで近付いてきたのを聴いた瞬間、一気に身を乗り出してナイフを振り抜く。刃が疾駆してきた男の胸部へ深々と食い込み、男は足を滑らせるように倒れ 地面の葉が巻き上がった。
 いい具合に心臓に刺さっているようであり、間違い無く致命傷である。男から剣を奪って顔を上げた瞬間、手を伸ばせた触れれる距離で、血潮で穢れた青い獣と瞳が合う。神経が一気に張り詰め、一瞬が永遠に感じられた。その獣は疾駆しながらユミルを確りと見据え、尖った鼻をひくひくと鳴らした後、視線を逸らして横を通り過ぎてい
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