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王道を走れば:幻想にて
第四章、その5の3:青き獣
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間とは違った輝きを見せており、身体中に汗を掻いていなければその美しさを愉しんでいたであろう。だが慧卓ら面々においては、唯一それに気付いて感動を覚えそうなパウリナでさえ、道無き道の踏破性の無さに苦労しているようであり、輝きはただ目を疲れさせる光だけに留まっていた。
 彼女はつい様子が気になって己の主人を見る。神経を尖らせたように、しきりに後ろを見遣っていた。

「どうしました?御主人」
「・・・視られているな」
「?何にです?こいつですか?」

 傍から顔を出していた小鹿を指差すが、ユミルはそれに意を介さずパウリナに鋭く告げた。

「パウリナ。先に歩いていろ。俺が殿を務める」
「は、はぁ」
「もうじき騒ぎが起こるだろうから、それを聞いたら全速力で平原に向かって走れ。決してケイタクを一人にするな」
「わ、分かりましたっ」

 冗談が通じぬほどの真摯さにパウリナは気を引き締めて、慧卓らの方へ駆け寄った。事情を説明する彼女の背を見詰めながら、ユミルは懐にある何本かの短剣の柄をそっと撫でる。耳を澄ませれば、後ろの方で草木を踏みつける擦れた音が幾つも聞こえて来た。

(さてと・・・正念場だな)

 背後からひしひしと感じる殺意の数々に、ユミルの闘気が徐々に湧き上がってきた。後ろをちらりと見遣るその目には、追尾する男達と同様に俄かながらも殺意の光が込められている。
 連れを先に行かせて幾度も警戒の目を送る姿に、男達は尾行が悟られたと確信した。

「気付かれたか?」
「構わん、こっちが多勢なんだっ。気付かれたとて奴等の抵抗など痛くも痒くもならん」
「その通り。エルフの技と闘志をもってすれば、奴らなど一捻りよ」
「ああ。後ろから奇襲をかければそれで終わりだ。人間などその程度よ」

 残忍さを交えて男の一人が微笑む。面子と名誉を踏み躙った代償として易々とは死なせない、という魂胆である。ふと男の一人が周りを歩く仲間を見渡し、不審げに頸を捻った。

「あれ?おかしいな」
「どうした」
「・・・なぁ、俺ら全部で15人だったよな?」
「そうだが?」
「・・・一人減ってないか?」
「はぁ?」

 疑問に釣られて指を向けて数を数えてみる。十秒程度で数え終わるが、申告通り、数は14人である。不気味な感じがして背筋がびりりと震えた。 

「・・・数が合ってねぇ。どうなってやがる」
「なぁ、一応アイ=リーンの奴に知らせるべきーーー」
 
 そう言おうとした瞬間、男の背後から青い何かが覆い被さり、男を地面に組み伏せた。余りに唐突な展開に立ち竦み、直後背中に熱いものが食い込んで地面に倒れこんでしまった。立ち上がろうにも腰辺りが妙に傷んで立ち上がれず、歪んだ顔だけを振り向かせる。男の苦痛の瞳が、黄金色の猛禽の瞳と噛み合った
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