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王道を走れば:幻想にて
第四章、その5の2:思い通りにいくものか
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味わうように、希望に満ち溢れた言葉を詠う。

「父上、今日ほど父上に感謝する日は御座いません・・・!長らく父上のお傍にて己を磨いておりましたが、その努力が他ならぬ父上に認められるとは、感無量です!」
「ホツ。俺の期待を裏切るなよ?お前にはいずれニ=ベリ様を支えてもらうべく更なる教育を施す。そして、第二のニ=ベリ様となって皆を指導するのだ。エルフが誠に求めるのは知ではなく、武であると心に刻め」
「・・・・・・違うでしょう、父上」

 冷水が流れたように空気が静まり返る。それを呟いたのは言うまでも無い、後継者に選出されなかったソツである。慧卓が聞いた事の無い、冷静で、それでいて重みのある声色で彼は言う。

「父上が仰られているのは、それは覇道ではないですか。我等の祖先は何と申していたか、お忘れですか?『勇によって立つは底無しの血の池を築き渡るが如し。友誼の花を忘れる勿れ』。父上は敢えて、この諺を無視なさるのですか」
「何が問題だ」
「我等エルフはもう充分に血を流したではないですか!三十年前も、そして今もです!これ以上の争いは我等エルフの自滅に繋がってしまいます!どうかお考え直しを。私が父上の跡を継げれば、一人でも多くのエルフを未来へ繋げる事が出来ます!」
「軟弱な発想だな、ソツ。そんな姿勢を貫くから、貴様の配下というのはどいつもこいつも弱者ばかりなのだ」

 くつくつと冷笑するホツを、弟は鋭く睨みつける。そして彼以上にホツの言葉に反応する者達が居た。ソツを信奉し、彼に忠を誓った臣下達である。

「今の言葉・・・兄君のものとはいえ見過ごす事が出来ません!」
「ホツ様、今の御言葉はたとえ弟君に対してであっても侮辱に当たります。即刻取り消して戴きたい」
「拒否する。そもそもなぜ俺が己の発言を取り消さねばならぬ?俺の発言は既に父上の発言と同じだぞ?貴様らが楯突くほど、ソツの立場はどんどんと悪くなるのだがな?」
「ホツ様っ・・・!」

 悪びれもせずに勝ち誇った笑みを見せるホツを見て、臣下達は顔に怒りの血を上らせる。隣の座席でパウリナが怯えたように身を竦ませてそれをユミルが庇っている様子を、慧卓が横目で捉えた。

「父上、何とか仰せになって下さい。私はエルフがエルフ同士で争う姿を見たくはありません!勝手な言い草ですが、はっきり申し上げます!兄上は人々を指揮する器ではありません!!」
「なんだと、貴様っ!兄に向かってその口はなんだ!」
「何度でも申し上げます!兄上の目指す道は父上と同じ、覇道の道であり、夢想の道なのです!他者を武で排斥する道は、今のエルフには不要です!今必要なのは対話による築く、平和のある未来です!それを作れるのは私だけなのです!!ですから私にこそ後継者の座が相応しいのです!融和の精神を以って、私がエルフを率い
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