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王道を走れば:幻想にて
第四章、その5の2:思い通りにいくものか
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供でして、怒ると結構怖いですよ。あまり刺激しないようにお願いします。・・・考えてみればおかしいな、ラプトルは群れで行動する筈なのに」
「そ、そうなんですか。じゃぁこいつ、群れから逸れて?」
「可能性としては無視できませんが、ここに来た以上は仕方ありません。今日だけでも保護して、暫く様子を見ましょう。群れの居場所が分からぬ以上、下手にこいつを伴って野に出るのは危険ですからね」
「そうなんですか・・・分かりました。では当分はこいつの事・・・そうですねぇ、ミケにしましょうか」
「ちなみにこの子、顎が細いので女の子ですね」
「やっぱミカにしますね。ミカ、いくぞぉ」

 二人は会話を続けながら館の方へと向かっていく。後ろで寝そべっていた恐竜、もといミカはその声に反応してか目を向けて立ち上がり、一度身震いした後にまるで従者の如く慧卓の後をついて行く。黄金の瞳がきょろきょろと村の彼方此方を見て回り、その視線の先に居た村人達は慧卓を憎悪の目で見るのをやめて慄いた。少しざまぁ見ろというのが慧卓の内心であった。村を警備する私兵らしき者達には逆に反感を買ってしまったのが、気まずい所である。
 慧卓は館までの道すがらソツと雑談をし、館に辿り着くとミカを門の内側にある厩舎の近くへと置いて、領主の部屋へと赴いた。開口一番にキ=ジェが問う。

「どうであった、補佐役殿?」
「どう、とはどういう意味でしょうか」
「貴様は息子二人を見てどう思った?遠慮も礼儀もいらん、思う様いってみい」

 身を乗り出して聞いてくる。困った様子で慧卓は頬をかりかりと掻き、ぬけぬけとした態度で言う。 

「兄君のホツ様ですが、正に今のエルフを代表するような方でありました。屈強な肉体をお持ちであり、自らに大きな自信を持っている。そして人間を嫌っており、それを私の前で堂々と口外なされた。そのような姿勢を見るからに、きっと兄君はお父上の背中を追って育ってきたのだと理解しております」
「弟は?」
「非常に礼儀正しい方です。兄君とは正に正反対だ。武をもって語るを善しとせず、言葉による解決を目指す方だと思いました。正直な所、彼とは仲を違えたくありませんね」
「ふん、まったくもってふてぶてしい発言だ。だがそれで良い。俺が話しやすくなる」

 キ=ジェは猪面を得意げに歪めながら、誇りと優越心を滲ませたいやらしい口調で言う。

「昨今の情勢を貴様は知っているな?ニ=ベリ様とイル=フード様との間で半ば内乱状態だ。・・・まぁ、この付近では争いとは無縁だから内乱の空気は感じられんが、他の地域では本当に殺し合いをしているらしい。何とも馬鹿馬鹿しい事ではないか。我等の真の敵は目前に居るというのに。
 ・・・俺と俺の村がこのような幸運に恵まれるのは偏にニ=ベリ様の御蔭だ。あの方が貴重な私兵を割
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