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王道を走れば:幻想にて
第四章、その5の2:思い通りにいくものか
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てみせます!」
「・・・それは夢物語に過ぎません、ホツ様」
「・・・ケイタク殿?」

 突如としてホツの熱帯びた口調を冷ませたのは、慧卓の冷ややかでどこか演技ぶった言葉であった。キ=ジェが愉悦の笑みを浮かべて彼を見る。

「此の度の領主様の御選出は、私は非常に理に適ったものだと思います。ホツ様の臣下の方々が口を挟んでいい問題ではありません」
「なんだと人間ごときがっ!」
「何の権利があってそのような戯言を!」
「戯言?貴方々は本来、一体誰に仕えているのですか?ホツ様ではないしょう?ここにいらっしゃるキ=ジェ様にこそ忠心を捧げるべきではないのですか?それこそが忠義の筋だと思いますがね。正直申し上げて、部下の御忠心がこの程度というならば、これを率いる棟梁の器というのが知れますね」
「貴様っ、言うに事欠いてっ!!」

 臣下達が怒りに震えながら席を立ち、拳を彼に振ろうとする。しかしホツが慌てて慧卓の前に立ち塞がったため、彼らは屈辱のために歯を食いしばるしか出来なくなってしまった。
 領主と彼の長男につい先程まで注がれていた視線は、より一層の熱烈さを帯びて慧卓に注がれた。慧卓は態度を硬化させてそれを受け流し、態とらしい抑揚を伴って用意していた台詞を次々と吐き出していく。

「大体です、領主様が申された事をちゃんと聞いてましたか?この御方が今必要となさるのは、大言壮語を吐かぬ屈強な勇士、それも領主様の御考えを深く御理解している方です。ホツ殿と一度だけしか御話しておりませぬが、私にとってホツ様は非常に屈強で、且つ類稀な才幹の持ち主であると御見受けします。聞くに今宵の熊も猪も、ホツ殿がただの一矢でのみ仕留めたとか。この勇猛果敢ぶりこそが領主様がお求めになられる、エルフの指導者たる素質ではないのでしょうか?
 私には領主様がお考えになる事が、少しばかり理解できましたよ。民草はいつだって強力な指導者を求めるのです。心身ともに屈強である、本当の指導者をね。領主様にとってそれこそが、ホツ様なのです」
「ほう・・・」

 次期後継者の感心の溜息が聞こえるが、慧卓にとってそれは火に油を注ぐというもの。込み上げて来る感情を必死に抑えながら、彼は本心では思ってもみない辛辣な言葉を投げかけた。

「大してソツ様はいかがですか?先程領主様からお伺いしましたが、何でも、まだまだ見習い程度の腕前しかない、貧弱な剣士だとお聞きしましたが。そんな彼が後継者の候補にそもそも選出される方が不自然です。それならば、そこいらの衛兵を引っこ抜いた方が早い」
「・・・本当に、そんな事を?父上」
「・・・概略としてはあっているな」

 紡がれた言葉は衝撃を伴い、ホツの顔を冷静な硬直させた。その冷酷な茶番の様子を見る余裕が出来たのか、パウリナの呟きが慧卓の耳を打って
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