第十六話
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モニターで時間を確認し『もう大丈夫だな?』と尋ねてから返事も待たずに、おもむろにヘルメットを外した──自分のではなく船長であるケネスのヘルメットを。
「……きゃーっ!」
ケネスは正気に返った瞬間、期待通りの悲鳴を上げると、慌ててヘルメットを被り直し宇宙服とヘルメットを一体化させる水密気密ファスナーを締める。
『な、何するだ!』
咄嗟に故郷のオレゴン訛りが口を突いて出る。
『いや、だって誰かが試してみないと』
全く悪びれる様子も無いウォルター。
『お前が自分で試せ!』
『そういうのは船長の役目じゃないですか。俺がクルーを守る! みたいな?』
『お、お前と言う奴は……いいか、もっと自分の船長を大事にしろ。失われた船長は二度と戻ってこないんだぞ!』
『船長、俺が居るから大丈夫ですよ。後は任せてください』
そこにロバートが割り込むと事態を混ぜ返した。
こいつ等、余裕がありすぎるとエルシャンは呆れたが、むしろ逆だった。普段はもう少し真面目で、それなりに統制も取れている腐っても『ライトスタッフ』なのである。ただ取り巻く状況が異常すぎた。
『一応、ケネスさんが確認してくれたようですが、身体に異常は感じませんか?』
『んっ? ……ああ、確かに思わず吸い込んでしまったが、今のところは異常は感じてない』
そう言うとヘルメットを外して、大きく息を吸い込んでみせる。そして左前腕部のモニターを確認して心拍数や呼吸回数、体温に変化がない事を確認する。
『……うん、大丈夫のようだ』
冷静沈着で有能でなければ、こんな重大な計画のリーダーに選ばれるはずが無かったのである。
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