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故郷は青き星
第十六話
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損失だった。しかし地球を連盟に加盟させる事が出来れば【敵性体】をこの銀河系から駆逐すると言う誰もが口にしながら、同時に諦めていた宿願を果たすことが出来るかもしれない。
 エルシャンは、もし自分に復讐以外の新しい生き方があるとするなら、この銀河を救いたい。【敵性体】によって踏みにじられる命が無い世界を作りたいと思っていた。

『ところで、どなたか怪我をされた方は居ませんか? 治療が必要ならこちらで行います』
 ついでにパイロット適正検査もしてやろうと企んでいる。一人でも良いからサンプルデータが取れて想像通りの数値を出してくれたら作戦実行する気なのだ。
『いや、だが治療と言っても、我々は宇宙服を脱いそちらにいく事は出来ない』
 救命ポッドの件で呆けているケネスの代わりにロバートが答える。
『文明を持つ段階まで進化した種族の母星の多くは、極端に大気組成が異なる事は無いので大丈夫とは思いますが、一応検査をしてみるのでサンプルをいただけますか?』
 エルシャンの言葉と同時に格納庫の壁の一部が移動して開き、中から高さ120cmくらいの三角柱型の物体が現れる。そして下部に取り付けられた直径20cm程の3個の球体をタイヤのように回転させて移動するとウォルターの前で止まり、三角柱の3面の長方形の1つの中ほどからロボットアームが現れ、ハンドル付きの円柱状物体を差し出す。
『片手で円柱を握り、もう一方の手でハンドルを引けば内部に空気を取り込み組成を解析する装置です。その結果必要であれば中の空気を調整します』
『分かった。暫く待ってくれ』
 ウォルターは装置を持って宇宙船のエアロックのハッチを開き中に入り再び閉じる。
 エアロック内では、中に侵入した格納庫内の空気を抜き取り、更に埃等を完全に除去してから船内と同じエアを充填する。
 宇宙船ウルスラグナには現在2つのエアロックが存在する。1つはウルスラグナ固有のエアロックで、もう1つは船体後部にドッキングしてる火星着陸船のエアロックだった。
 ほとんど大気の無い月面着陸船のエアロックではレゴリス(月の砂)を船内に持ち込まないようにすれば良かったが、大気のある火星では船内に火星の大気を持ち込むわけにはいかないので、エアロック内の空気を完全に入れ替える機能があった。
『船内の空気を装置に取り込んだぞ』
 ウォルターからの通信にエルシャンは『そちらの方が酸素濃度が1%高い以外は違いがありませんね』と答える。
『我々は基本的に酸素と酸素を薄めてくれる無害な気体があれば生きていけるかな』
『とりあえず酸素濃度をそちらに合わせます。あなた方の星の自転周期の3/1000程お待ちください』
 エルシャンに『了解した』と答えたウォルターはエアロックを出る。左前腕部に取り付けられたバイタルデータなどの各情報を表示する
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