第二部
第一章 〜暗雲〜
九十二 〜勅使〜
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「その代わり、守り役兼軍師として、張勳さんという方が傍にお仕えしているようですねー」
「ふむ。それ以外に人材は?」
「比較的名の知れた人物という事であれば、将に紀霊殿、雷薄殿、陳蘭殿。文官は韓胤殿と揚弘殿、と言ったところでしょうか」
顔触れとしては、そこまで高名な人物はおらぬという事か。
その分、家柄と財の威がそれだけ大きいという事なのであろう。
「ご主人様。袁術さんを気にされておいでですか?」
「うむ。何やら、悪い予感がするのだ」
麗羽のように、己の行いを省みる事が出来れば良いのだが……そうはいくまい。
まだ見ぬ相手を警戒しても仕方ないのであろうが、何故か私は引っかかりを覚えていた。
「時に雛里」
「は、はい」
「私への仕官、愛里には伝えたのか?」
「いえ、まだです」
「ならば返書を認める故、お前も愛里への書簡を認めるが良い。お前の事も書かれているぞ」
「あ……」
書簡の最後に、荊州にいる雛里を麾下に加えるよう進言が書かれていた。
それだけ、友である雛里の事を気遣っているのであろう。
「良いな? 愛里を安心させてやれ」
「はい!」
嬉しそうな雛里。
「お兄さん。随分雛里ちゃんには甘いのですねー」
「……歳三様」
何故、そこで私を睨むのだ。
暫し、機嫌を損ねた稟と風を宥めるのに四苦八苦する羽目になった。
行軍を続ける事、更に数日。
江陵郡を過ぎ、襄陽郡を進む。
相変わらず、劉表軍が行く手を遮る事も、干渉する様子も見られぬ。
無論、襄陽の郡城には近付く訳には行かぬ。
雛里の地図と行軍指示に基づき、劉表軍を極力刺激せぬような進路を取る。
ここまでの手際を見る限り、雛里は才の一端は示していると言えよう。
食事のため、小休止を取っている最中。
思いもよらぬ事が起きようとしていた。
「朝廷からの使者だと?」
「はっ」
兵の知らせに、皆が顔を見合わせる。
「何用であろうか?」
愛紗だけではない、私も含めた全員の思いであろう。
「蔡和を引き渡せ、とでも言うつもりではあるまいな」
「いや、宦官共の事だ。無理難題を吹っかけに来たに違いあるまい」
「そうね。彩ちゃんや星ちゃんの言う通りかも知れないわね」
「何だと! お兄ちゃんを苛める奴は許さないのだ!」
喧々とする皆を余所に、軍師らは至って平静そのものだ。
「まぁまぁ。とにかく、お話を伺いませんかー?」
「風さんの仰る通りだと思います。勅使の方が何を伝えに来られたか、それをまず知る必要があります」
「では歳三様。お迎えしますが宜しいですね?」
「うむ。くれぐれも粗相のないようにな」
私は上座を空け、勅使を待つ。
ややあって、老官吏と、背の低い子供のような人物が姿を見せた。
帽子
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