第二部
第一章 〜暗雲〜
九十二 〜勅使〜
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ね」
「ふ、風! そういうあなただってそうではありませんか!」
「勿論ですよ。それに、もうお兄さんと風は他人じゃありませんしね」
「あ、あわわ……。そ、それってもしかして」
真っ赤になる雛里。
「止さぬか、風。昼間からする話題ではあるまい」
「むー、これでも風は自制しているのですよ。ねぇ、稟ちゃん?」
「わ、私に振らないで下さい!……私だって、私だって……」
む、不味い。
「風!」
「はいはいー。雛里ちゃん、ちょっと下がった方がいいですよー」
私も急いで書簡を片付ける。
「欲求不満の風に迫られて、歳三様がその身体を……。そこに、星や愛紗らも加わって、あんな事やこんな事……」
「あ、あの……。稟さん?」
「もう無駄ですよ。稟ちゃんの病気が始まりましたから」
「え?」
そして。
「ぶはっ!」
久々に、盛大な鼻血を噴き出す稟。
「キャッ!」
「はい稟ちゃん、上向いて下さいねー」
手慣れたもので、素早く止血をする風。
「ご主人様、稟さん大丈夫なんでしょうか?」
「……大丈夫、とは言い切れぬが。時折、稟はこのような事があるのだ」
「は、はぁ……」
「はい、終わりましたよー」
「ふがふが。す、すびばせんでした」
とにかく、続きを読むとしよう。
今のところ、異民族の蠢動もなく、外敵についての懸念はないようだ。
州内の賊も殆どが討ち果たされるか、他州へ逃げ去ったらしい。
寧ろ、睡蓮の死で揚州に混乱が生じ、不穏な動きが見られるか……。
「風。睡蓮の後任がどうなったか、情報は入っておらぬか?」
「はいー。残念ながら、孫策さんではないようですね。新たに洛陽から派遣されるみたいですよ」
やはりか。
雪蓮にそれだけの力がないとは思わぬが、睡蓮の威光が大き過ぎて、それに隠れてしまう格好になっている。
実際、睡蓮の死後は兵の逃亡が相次ぎ、呉郡を守り通すのが精一杯……そういう有様のようだ。
「だが、今の揚州を抑えられるだけの人物。……俄には思い当たらぬな」
「ええ。候補として名が挙がっているのが、劉ヨウ殿、王朗殿。いずれの御方も朝廷では相応の官位をお持ちです」
「あと、袁術さんも名乗りを上げているそうです」
「袁術? 雛里、それは確かか」
「あ、はい。同じ袁一族である袁紹さんが冀州牧に任ぜられて以来、何かと対抗意識を燃やしているとか」
「風の方にもその情報は入っていますねー。何と言っても袁術さんには財力と名門という武器がありますしー」
袁術か……確か、孫策より玉璽を手に入れ、皇帝を称した人物だ。
だが、民心の離反を招き、惨めな最期を遂げた筈。
「袁術と麗羽は同族だが、袁術の方とは面識がない。どのような人物か?」
「はい。まだ幼く、一人前と呼べるまでの器量はないようです」
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