第二部
第一章 〜暗雲〜
九十二 〜勅使〜
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風も敵わないのです」
「そ、そんな事ありません……。ただ、私はずっと荊州に居ましたから」
「いえいえ、謙遜するのはお兄さんだけで十分ですよ」
「……風。どういう意味だ」
「そのままですよー。お兄さんが慢心しないのはいいところですけど、時々度が過ぎると思いますし」
「そうだな。その意見には私も賛成だ」
「おお、やはり彩(張コウ)もそう思うか」
「はっはっは、主の負けでござるな。私や愛紗だけではなく、皆がそう思っているのですからな」
全く……。
信頼されているのは良いが、出汁にされては敵わぬぞ。
だが、一つだけ杞憂に過ぎなかった事がある。
雛里の突然の加入に対して、皆がすんなりと受け入れた事だ。
朱里と違い、雛里はまだ、何の実力も皆に示してはおらぬ。
無論、既に朱里という存在が我が軍にあるという事もあるだろう。
……要らぬ事にまで気を回し過ぎているのやも知れぬな。
「お兄ちゃん! 愛里(徐庶)から書簡が届いたのだ」
と、鈴々が竹簡を手に駆け込んできた。
「うむ。鈴々が受け取ったのか?」
「そうなのだ。お兄ちゃんに早く渡した方がいいと思ったから、自分で持ってきたのだ」
「そうか。ご苦労だったな」
鈴々の頭を、わしわしと撫でてやる。
「にゃー♪」
ふふ、こうしてやると喜ぶとは、子供っぽいところも相変わらずだな。
……ふと、突き刺さるような視線を感じた。
「何だ、風、雛里」
「何の事ですかねー?」
「あ、あわわ。な、何でもありましぇん」
何でもないなら、そう睨まずとも良いではないか。
さて、書簡を読むとするか。
「では、我らは軍務に戻ります。行くぞ、彩、星、鈴々、紫苑」
将らが天幕を出て行き、軍師三人だけが残った。
皆が私を取り囲むように、書簡を覗き込んだ。
……風が膝の上に乗ろうとするのは、流石に押し止めたが。
愛里からの書簡、内容の殆どは現状報告である。
「内政については大過なし、流石愛里ですね」
「山吹(糜竺)ちゃんも頑張っているみたいですねー。郡太守との兼任は大変でしょうけど」
「うむ。軍事面も桜花(士燮)が中心となり上手く取り纏めているようだな」
「…………」
雛里が、ジッと私を見ている。
「如何致した?」
「いえ。やはり、ご主人様は凄い御方だと思いまして」
「ほう」
「愛里ちゃんだけじゃなく、糜竺さんや士燮さんのような方々までも使いこなしておられます。皆さん、その気になれば州牧や中央の高官でも務まるだけの力量があると聞いていますから」
「そうかも知れませんが、皆望んで歳三様にお仕えしているのですよ?」
「ですねー。風もお仕えするとしたらお兄さん以外にはあり得ませんし。稟ちゃん、本当は曹操さんに仕官したかったのが今ではお兄さん一筋ですし
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