A's編
第二十七話 裏 (はやて)
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い。しかし、彼らは自分に縛られるべきではないと思ったからだ。
はやてからしてみれば、ここが彼らの帰るべき家であれば十分だった。それが家族だと思うから。それに晩御飯などで出来事を語ってくれる彼らの笑顔を見るだけで、はやての感じる少しの寂しさなど些細なことだと思う。はやてが望むのは、家族みんなが笑顔であることなのだから。
はやてにとっては、少し寂しさも含まれた幸せな生活がずっと続くと思っていた。太陽が東から毎朝登るように当然のように続くと思っていた。いや、正確には手放したくないと思った。ずっと、彼らと一緒にいられれば、それ以上を求めることはない。たとえ、闇の書の真の主になって、大いなる力が得られようとも、それにも代えがたいヴォルケンリッタ―という『家族』を得られたのだから。
だから、それがある日、突然床が抜けたようになくなるなど想像もしていなかった。
事の始まりは、11月も中旬になった頃だ。この日も昼間はシャマルを除いた全員が外に出ていた。しかし、夜には全員が揃って夕食を食べられることを確認していたはやては、全員分の夕食を作るためにキッチンに立っていた。今日の献立は、ヴィータのリクエストに応えてカレーだ。彼女は、子ども扱いするな、というのだが、嗜好は子どもそのものであり、ハンバーグやカレーが好物だった。
リビングでは、シグナムが新聞を広げており、シャマルは、自室で何かをやっている。彼女は趣味に目覚めたのだろうか、時折、部屋にこもって何かをやっていた。ヴィータは未だに帰宅しない。だが、心配するほどではない。彼女が遅くなることは日常茶飯事だからだ。最初は、危ないから、と注意していたのだが、そもそも彼女たちに危害を加えようとしたところで、ほとんどが返り討ちだろう。ザフィーラは、リビングで丸まって寝ていた。
「う〜ん、こんなもんやな」
お玉でカレーを少量だけすくって味を確かめる。甘口すぎるのもダメだが、辛すぎるのもヴィータが食べられないため、市販のルーをブレンドしたカレーは作るのが難しいのだ。だが、今日はどうやら最初の一回でうまくいったようだった。この味であれば、はやても満足できるからだ。
よし、ならば、次はサラダでも―――と冷蔵庫を開けた時、リビングからシグナムが顔を出していた。
「主、申し訳ありません。どうやらヴィータが道に迷ったようなので、迎えに行ってきます」
「ヴィータが?」
「ええ、どうやらゲートボールとやらで、隣の町まで遠征したらしく」
戸惑ったようなシグナムの表情。むしろ、はやてとしては、ご老体たちが、隣町まで遠征に行くほうに驚いた。しかも、それで道に迷って帰れないとは、それこそ、彼女が嫌う子どものようだ。そんな、ヴィータの状況に苦笑するはやて。
「うん、なら、迎
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