A's編
第二十七話 裏 (はやて)
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自由が一つもない生活だったかもしれない。しかし、そこには何もなかった。今のような誰かと分かち合える喜びが。誰かのぬくもりが。
「だから、これでええんよ」
そう、これでいい。この小さな幸せだけではやては満足していた。
◇ ◇ ◇
八神はやてとヴォルケンリッタ―たちの生活は順調といえるだろう。しかし、いつまでも同じとは限らない。彼らもこの生活が慣れてきたのだろう。彼らと家族になって四か月ほど経つと彼らは、彼ら自身の生活基盤を築き始めていた。
シグナムは、ニートという言葉をテレビの中で知ったのだろう。自分の状態を鑑みて、その状況に我慢ならなかったのだろう。近くの子供剣道場で、指南役を仰せつかったらしい。もっとも、それは自分の鍛錬のついでというような形ではあるらしいが。当然と言えば、当然だ。彼女の剣は、守るための剣。戦うための剣。それをスポーツに応用することは難しいだろう。
ヴィータは、近くのゲートボール場でおじいさん、おばあさんと一緒にゲートボールを楽しんでいるらしい。彼女の明朗快活な性格は、年寄からしてみれば、可愛い孫のように思えるのかもしれない。時折、お菓子をもらった! と笑顔で話していた。何ともほほえましいことである。
ザフィーラは、散歩ついでなのか、ヴィータについていくことが多くなった。子供一人というのも具合が悪いのだろう。しかし、人間形態になるならまだわかるが、犬の形態で一緒に行動して意味があるのだろうか、と首をかしげるが、彼女たちが満足しているならそれでいいか、とはやては思うことにした。
彼らの中で唯一、はやてと一緒に行動するのは、シャマルだ。彼女は主にはやてのサポートをしている。外に行くときも、買い物に行くときも、シャマルがサポートしてくれた。一度、自分のことなど気にせず、彼らのように行動していい、といったが、シャマルは一瞬、驚いたような表情をし、すぐにはやての言葉を否定した。はやてちゃんの傍にいることが好きですから、と。
以前よりは、人の密度が減った八神家。少し前の常に五人そろっていた時から考えると、少しだけ静かになった。それをはやては、心の隅で寂しいと感じるようになっていた。いるはずの人がいないだけで、そこに何とも言えない胸を締め付けられるような、何かが足りないような切なさを感じる。それが寂しさだと気付いたのは、幸運だったのか、あるいは不幸だったのか。
そして、そんな自分にこっそり苦笑する。彼らが来る前までは、はやては一人だった。その状況をなんとも思わなかった。しかし、今では、一人が五人となり、少しだけ静かになっただけで寂しさを感じるようになってしまったのだから。それでも、はやては彼らに何かを言うつもりはなかった。確かにはやては闇の書の主かもしれな
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