A's編
第二十七話 裏 (はやて)
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』。今までは、本当なのだろうか、と疑問に思いながら読み進めていたが、今ならはっきりとその本に同意することができる。
八神はやては、家族を得て、確かに幸せだった。
◇ ◇ ◇
「うわぁ」
八神はやては、シグナムによって抱きかかえられながら出てきたベランダから空を見て、息をのんだ。季節は夏。七夕を過ぎたあたりではあるが、天の川が綺麗に見えていた。今までなら、星空を見ようとは考えなかっただろう。そう考えたのは、無知な彼らに教えてあげたいと思ったから。地球から見える星空というものを。もっとも、一番見とれていたのは、はやてだったのだが。
そんなはやてを慈しむような笑みでシグナムは見ていた。
「主、はやて、本当によろしかったのですか?」
「なにが?」
「闇の書のことです。主の命あらば、我々は、闇の書の蒐集を始め、主は闇の書の主となり、大いなる力を手に入れられるでしょう。そうすれば、この足も―――」
気遣うようにはやての足をなでるシグナム。生憎ながら、はやての足には感覚がほとんどなく、彼女の手のぬくもりを感じることはなかったが、彼女の心遣いは感じることができた。彼らが願っているのは、主―――はやての幸せなのだ。確かに、普通の人であれば足が動かないことは苦痛であろう。不幸であろう。しかし、はやてにとっては、足が動かないことは普通であり、当然なのだ。当然、動けばいいな、とは思うものの無理して、動くようにしたいとは思わない。
だから、はやては首を横に振った。
「あかんて。闇の書のページを集めるためには、たくさんの人に迷惑をかけるんやろ?」
一応、主として話は聞いていた。どうやって、闇の書のページを集めるのか、ということを。その方法は、魔力の源となるリンカーコアから強引に魔力を抜き取ること。しかも、その時には相当の痛みを感じるらしい。その行為をはやての倫理観がよしとはしなかった。
―――自分が幸せになるために他人に迷惑をかける。
それでは、胸を張って、幸せにはなれない。誰かを傷つけて得た幸せだ、と下を向いてしまう。はやてが、他人を押しのけてでも幸せになる、という性格であれば、シグナムの提案にうなずいていただろうが、生憎、はやての性格からはそれは無理な話だった。ならば、誰かを傷つけて得られるはずの大きい幸せよりも、今のシグナムが、シャマルが、ヴィータが、ザフィーラが、家族がいる小さな幸せをはやては望む。
「私は、今のままでも十分幸せや」
それは彼女の本心だった。本の中でしか知らなかった『家族』を教えてくれたヴォルケンリッタ―。他人から見れば、普通かもしれない家族という小さな幸せ。その小さな幸せではやては満足していた。確かに、彼らが来る前の生活も不
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