A's編
第二十七話 裏 (はやて)
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どうなったのだろう、と部屋を見渡そうとして、驚いた。驚きのあまり、「ひっ」という声が漏れてしまうほどに。
いや、しかしながら、少女の反応としては至極当然のことだろう。今まで、自分しかいなかったはずの部屋に突然、片膝をつけてかしずいた四人の人間がいれば、それも当然の話だ。
本が急に自ら意志を持ったように動き出し、さらに喋り、光を発したと思えば、部屋には見知らぬ人間が四人もいる。そんな状況を人生経験の少ない九歳の少女が処理しきれるはずもなく、わけもわからなくなった少女は、まるで現実を逃避するかのように意識を失うのだった。
◇ ◇ ◇
八神はやてが次に意識を取り戻したのは、見慣れた病院だった。目を覚まして、最初に目に入ったのは、心配そうに自分の顔を覗き込む主治医の石田幸恵の姿であった。はやてが、何事もなかったように起き上がるのを見て、安心したようにほっ、と息を吐く幸恵の姿を見て、心配かけてしまったなぁ、と思う。その一方で、はやては、どうして自分が病院にいるのかわかっていなかった。
しかしながら、その答えはすぐに出てくることになる。気を失う前に最後に見た光景とともに。
「それで、あの人たちだれ?」
「え?」
心配かけたことを謝罪したのち、幸恵によって指さされた先には、黒い服に身を包んだ四人組がいた。そのうち三人は女性で、残り一人は男性。しかも、一人は犬耳さえついている。季節は初夏に入ろうとしているが、彼らの格好は明らかに場違いだ。主治医である幸恵も知らない人物であり、姿から怪しいと判断したのだろう。彼らの周りを医師たちが胡散臭そうな顔で見ていた。
「えっと……」
さて、ここで困ったのは、はやても一緒だ。はやて自身も彼らがいったい何者か、など知らないのだから。答えに窮するはやてだったが、それを救ったのは、彼ら自身による言葉だった。
彼らはどうやら思念通話という魔法のようなことができるらしい。もっとも、これはあとで本当に魔法だと分かったのだが。その思念通話で命令すれば、その指示通りに動く、と彼らは言う。
その話を信じられるか、どうかだが、彼らの態度を見るにうそを言っているようには見えない。なにより、彼らを即座に断じることもできない。事情を聴かなければ。はやての記憶違いでなければ、彼らは本の中から出てきたのだから。ここで警察に突き出すことは簡単だ。だが、何も知らないまま突き出しても意味がない。だから、はやては、とりあえず彼らをかばうことにした。遠い国からやってきた遠い親戚ということにして。
何とも、強引な話だ、と自分で思いながらも乾いた笑みで、幸恵を説得するしかなかった。最終的には、はやての言っていることを否定する要素もないし、彼らも同意していることから
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