A's編
第二十七話 後
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のか。もっとも、そっちのほうが僕にとっては都合がいいのだが。まさか、精神的には兄的立場で見捨てることができないなんて言えないから。僕の癖のように思われているなら、いつものことか、で片付けられるので幸いなのだ。
母さんから「遅くならないうちに帰ってくるのよ」という言葉をもらった後、電話の通話を切り、二つ折りの携帯をぱたんと閉じるとリビングへと戻った。そこには、はやてちゃんが持ってきた六冊の本が置いてあるだけ。リビングの隣のキッチンからは、カレーのいい匂いがするので、はやてちゃんがカレーを作っているのだろう。
僕は、リビングでソファーに座らず、そのままキッチンのほうへと足を運ぶ。何か手伝いができれば、と思ったのだ。この世界に生まれてから料理は、家庭科でしかやったことがないが、前世の大学生時代は、二年間、自炊をしていたのだ。包丁と簡単な料理ぐらいは作ることができる。
「はやてちゃん、なにか手伝うことない?」
「へ? ショウくん、料理できるんか?」
「まあ、少しだけね」
僕ができるのが意外だったのか、はやてちゃんは少し驚いたような声を上げる。確かに、事情に迫られなければ、小学生が料理ができるとは思わないだろう。それをいうのであれば、トントントンと手慣れたようにリズムを刻むはやてちゃんは、その事情に迫られた小学生に分類されるのだろうが。
「ほんなら、私がサラダ作るから、カレーを混ぜといてくれんか?」
「了解」
それは、料理というよりも見張り番では? とは思ったのだが、カレーとサラダというメニューであれば仕方ない。はやてちゃんが、サラダづくりに集中できるのであれば、僕は見張り番という役に甘んじて徹しよう。
そう思いながら、お玉はどこ? と場所を尋ねて、言われた調理道具がそろった一角にあったお玉を手に僕は、カレーをあっためているであろう鍋の前に立った。
僕が上から覗き込んだ鍋の中身は、とても二人分とは思えない量のカレーが入っていた。家族の分も含んでいるのだから当然と言えば当然だ。僕が電話をかけてからあまり時間が経っていないことを考えれば、このカレーは、今日作ったものではないだろう。おそらく、前日から寝かせたものだろう。ならば、味は期待できるはずだ。
そんなことを考えながら、鍋の中身をかき混ぜていたのだが、その中で違和感を感じた。
――――あれ? おかしいな。どうして、踏み台もなくて調理ができるんだ?
そう、おかしい話だ。車椅子に座っていながら、鼻歌交じりに料理をしているはやてちゃん。そして、立ったままで鍋の中身を見下ろすことができ、余裕で鍋をかき混ぜることができる僕。その点に違和感を抱かざるを得ない。
普通、キッチンの高さは、使用者の高さによって決められる。なのに
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