A's編
第二十七話 後
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ようだ。
お互いに話す内容が尽きることはなかった。その本のどの場面が好きだとか、どのキャラクターが好きだ、とか、話し始めればきりがない。本は、人によって感じ方が異なるものだろう。異なる視点とはよく言ったものだが、つまり、同じ文字なのに考え方が異なる。感じ方が異なる。その差異を楽しむのも、人と本について語る時の楽しみ方だと思う。
しかしながら、話しながらわかったのだが、僕が知略を駆使した戦闘場面を好むのに対して、はやてちゃんは、ギルドの中のパーティという意味で使われるファミリでの日常パートが好きなようだ。
はやてちゃんが言うには、異世界から戻れなくなった主人公が、新しく家族を作るところが好きなんだとか。僕としては、知らない世界で戦いに巻き込まれながらも、抗って戦う様が好きなんだけど、それは好みの違いというやつだろう。
「―――ああ、もうこんな時間か」
ある程度、話の区切りがついたところで、何杯目になるか数えていないコーヒーを口に含んだ後、棚の上に設置している時計を見て僕はつぶやいた。普通なら、そろそろ帰る時間だといっても過言ではないだろう。それに、今日が休日であることを踏まえても、そろそろ家族の人も帰ってくるはずだ。ならば、これ以降は家族の時間。部外者の僕がいるべきではない。
だから、そろそろお暇するにはいい時間である。
「いい時間になってきたから、そろそろお暇しようかな」
「え?」
僕としては、時間的には、実にいい時間だと思った。遅いわけでもなければ、早いわけではない。母さんやアリシアちゃんたちに心配させるような時間ではなく、はやてちゃんの家族も帰ってきているわけではない。だから、切り出すタイミングとしては間違っていないと思う。
しかしながら、僕が帰宅を告げた時のはやてちゃんの顔は驚きの表情だった。
「も、もう帰るん?」
はやてちゃんの口調からは焦りのようなものを感じ取ることができた。だが、彼女が焦る理由がわからない。それとどこか引き留めたそうな口調もよくわからない。
「そ、そやっ! ショウくん、晩御飯食べて行ったらええよ」
突然、ぱんっ、と手を打ったかと思うと名案だ、と言わんばかりの口調で僕に提案してくるはやてちゃん。
いきなり晩御飯と言われても困るのが実情だ。しかも、僕の家でも僕の分を確保しているだろう。あまりに突然すぎる提案は、僕としても困ってしまう。さらにいうのであれば、僕とはやてちゃんは、確かに共通の趣味で意気投合したのは間違いない。しかしながら、出会ったのは今日なのだ。それなのにいきなり家で晩御飯を食べるのは少し躊躇してしまう。
「でも、家の人に悪いんじゃない?」
しかし、いきなり断るのも心象に悪かろう。もしかしたら、嫌われ
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