A's編
第二十七話 後
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だったのかもしれない。
――――なぜ?
それは、僕がこれから行く場所を考えれば、簡単に想像できた。つまり、八神家だ。はやてちゃんに僕を近づけたくなかった。近づけない目的は僕にはわからないが、それ以外に理由を思いつかない。今までと変わったことなんてそれぐらいしか思いつかないから。
そうだとすると、はやてちゃんも魔法に何かしたら関係あるのか………?
「母さん、僕、はやてちゃんの家に行くよ」
僕は大丈夫だったが、はやてちゃんが心配になった。今までなんでもなかったから大丈夫だとは思うが、僕が襲われた直後で、しかも失敗しているのだ。その分のツケが、彼女に向かったとしてもおかしい話ではない。僕に何かできるとは思わないが、それでもここで見捨てて家に帰るという選択肢は少なくともない。
ちょっと、ショウちゃん!? と声を出す携帯電話の通話を切ると形態をポケットに仕舞って、道路に投げ出されたお泊りセットの入ったボストンバックを持つとはやてちゃんの家の方向に向かって走り出す。幸いにして、道のりの半分は来ているのだ。走れば、五分もかからない。このときは、運動会のときに発揮された運動能力に感謝した。五分、走ったとしても息切れしないのだから。
五分、全力疾走に近い形で走り続けて、ようやくはやてちゃんの家の前につく。僕は、少しだけ息を整えた後、『八神』と書かれた表札の横にあるインターフォンを押す。ピンポーンという昔ながらの音を鳴らした直後、がちゃ、とドアが開いて、車椅子に座ったはやてちゃんが姿を現した。ほとんどタイムラグないことを考えると、もしかしたら、ドアの前で待っていたのかもしれない。
確かに三十分ぐらいしかかからない道のりで一時間半ほど時間がたっていれば心配もするだろう。だが、とりあえず、変わりないはやてちゃんの様子に僕はひとまず安心する。
なぜか、はやてちゃんも、僕の顔を確認すると、ほっ、と安心したように息を吐いた後、笑みを浮かべて口を開いた。
「おかえりや、ショウくん」
まさか、そんな言葉で迎え入れられるとは思わなかった。僕が、虚を突かれて驚いている間に、笑顔だったはやてちゃんの表情が不満げに頬が膨らむ。
ああ、そうだ。そうだった。その言葉で迎え入れられたのだ。ならば、僕が答えるべき言葉は一つしかない。おそらく、彼女はいつまでたっても僕がそれを口にしないのが不満なのだろう。だから、僕も彼女の笑顔で迎え入れてくれたことに応えるようにできるだけ笑顔で返事をする。
「ただいま、はやてちゃん」
僕がその言葉を口にした瞬間、今まで不満げだったはやてちゃんの表情は、花が咲いたような満面の笑みへと変化したのだった。
つづく
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