A's編
第二十七話 後
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た。
「くっ」
まずい、まずい、まずいと思った。明らかに僕で対処できる限界を超えている。
どうする? どうする? と頭をひねらせても逃げられるとは思えない。ここで、背中を見せて逃げ出したとしても、彼はすぐに追いつくだろう。僕の魔法を腕の一振りで砕くほどの実力を持っているのだ。しかも、それは彼の実力のすべてではないだろう。そこから導き出される答えは、逃げられない。
彼がゆっくりと近づいてくる。彼が近づくたびに後ろに下がる。しかし、それでも逃げられたのは数分の間だけ。気が付けば、僕の後ろにはブロック塀が立ちふさがっていた。彼から最大限距離をとるように動いていたら、いつの間にか壁際に誘導されていたらしい。ここからさらに逃げ出すのは無理だろう。
そんなことを考えている間にも、彼は近づいてきて、僕に手を伸ばす。彼は、僕を一体どうするつもりなのだろうか? 彼の気配からは全く想像できない。いったい彼が何をしたいのか、僕には全く分からない。わからないということは、恐怖へとつながる。いや、そもそも、魔法を使われて男に追いつめられているという時点で恐怖心満載なのだが。
ここまで追い詰められた僕にできる抵抗はせいぜい、相手を睨みつけることぐらいだ。
当然のことだが、彼はそんなことには歯牙にもかけず、僕に片手を伸ばしてくる。
そして、あともう少しで僕にその手が届くというときだった。彼が、不意に上を向いたのは。僕も彼につられて上を見る。
―――そこには、一人の騎士がいた。
手には手甲を装着し、右手には反りのない片刃の西洋剣を持ち、スカートのような部分にも鎧にも似た甲冑を装備している紫色の髪をポニーテイルにした女性がそこにはいた。
先ほどまでは全く気配を感じなかったことから、たった今、張られた結界を抜けてこの場に現れたと見たほうがいいだろう。はたして、彼女は僕にとって、敵なのか味方なのか。敵の敵は味方という形で助けてくれたら幸いなのだが……。
そんなことを思っていると僕の願いが通じたのか、剣を構えた彼女は、まっすぐ僕と彼の間に突っ込んできた。それを見て、仮面の男はたまらず後ろへと退避する。仮面のせいで表情はわからなかったが、動きから察するに彼は、動揺、あるいは、困惑しているように見えた。
「どうして、貴様がここにいる?」
仮面の奥から聞こえる男のくぐもった声。
「無論、この身は、我が主のため。主の命を除いて我がこの場にいる理由はない」
剣を構えながら仮面の男に対して全く油断せずに彼女は答える。
彼女の言葉から推測するに、どうやら彼女の主からの命令らしい。しかし、魔法に関連している人が、僕となのはちゃん以外にいるのだろうか。しかも、僕の知り合いに。あるいは、こ
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