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リリカルってなんですか?
A's編
第二十七話 後
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 しとしとと小ぶりの雨が降る中、僕とはやてちゃんは、八神家へ向けて公園の中で、歩みを進めていた。もっとも、歩みを進めていたといっても、僕が後ろで押して、はやてちゃんは、車椅子に座ったまま、大きめの傘をさしているのだが。

 どうして、こういうことになったかというと、さすがに雨の日の図書館の談話室が都合よく空いているなどという幸運がなかったためである。談話室があいていなかったからと言って、図書館の中で小声で話すというのも味気ない。だったら、どうしようか? と悩んでいた時にはやてちゃんが、おずおずといった様子で、自分の家へ行くことを提案してくれたのだ。

 いいのだろうか? とは思ったが、休日の昼間であり、夕方にはお暇することを考えれば、さほど問題はないだろうと思う。それに、はやてちゃんがおずおずといった様子だったのは、まだ親しくもない僕を呼ぶことに対する遠慮だったのだろう。

 だから、僕は、はやてちゃんの家が構わないのであれば、行こうかと彼女の案に乗ることにした。

 僕がそう答えた時のはやてちゃんの表情はどこか驚いた様子であり、しかし、それもすぐに笑顔にとってかわった。そのあとだっただろうか、僕が八神さんのことを『はやて』と名前で呼ぶように強要されたのは。ちなみに、僕もほかの友人たちと同じくショウで構わないと告げている。

 そういうわけで、僕たちは今、八神家へ向かって歩いている。状況は先ほども説明したとおりだ。はやてちゃんだけであれば、車椅子の部分に傘をさすところがあるので、そこにひっかければいいのだろう。きちんと車椅子を使う際に支障が出ないように設計されている。だが、それだけでははやてちゃんは濡れてしまう。そのための大きめの傘なのだろう。彼女をすっぽりと覆ってしまうのだから。

 それも今は、僕とはやてちゃんをすっぽり覆う都合のいい傘だった。

 僕も傘を持っているのだが、彼女が車椅子を押すよりも、僕が押したほうが早いため、こうやって僕が車椅子を押している。それに僕が先導できるわけでもなく、はやてちゃんを待たなければいけないのであれば、こちらのほうがより効率的だったのだ。そうやって、僕が後ろから押すといった時に渋ったはやてちゃんを説得した。

 しかしながら、と僕は思う。

 ―――はやてちゃんは、今日、どうしてこの図書館に来たのだろうか?

 もちろん、理由はいくつだって考えられる。本の返却期限が今日までだったとか、どうしても行きたかったとか。いくつだって思い浮かべられる。でも、そのどれもが、彼女が直接図書館に来る理由としてはどうしても弱いように感じるのだ。

 今日は雨だ。だから、地面はぬかるんでいるし、僕がこうして押している間でも何度か、タイヤが滑りそうになったこともある。力がついてきた僕で
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