第十八話 黒真珠の間(その三)
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うお考えなのでしょう」
「そうだ、いずれは必要としても今は……」
「帝国臣民のために改革を行う政府を守る、より大きな意味では帝国臣民を守る組織が必要だと公表しては如何でしょう。その上で新たな組織として立ち上げる。当然ですが組織の統括者はハイドリッヒ・ラングではなく別な人間を任命します」
「……なるほど」
ラインハルトが考え込んでいる。そしてヒルダに“どう思うか”と問いかけた。俺の予想が正しければ彼女は反対しない。
「私も国内の防諜を司る組織は必要だと思います」
ラインハルトが大きく頷いた、そしてキルヒアイスを見る。キルヒアイスも頷いた。二人とも必要性は感じていたのだろう。周囲から勧められたとあれば平民達に説明もし易い、良い機会だと思ったに違いない。
「しかし、誰に任せれば良いか……」
「フェルナー准将は如何でしょう」
「フェルナーか、しかし彼は……」
「総参謀長代理の職にあります。しかし元々はブラウンシュバイク公の部下だったため周囲からの風当たりが強いようです。むしろ新たな任務で使われた方が良いでしょう、そして彼の後任にはフロイライン・マリーンドルフを……」
周囲から驚きの声が上がった……。
帝国暦 489年 3月31日 オーディン 新無憂宮 アントン・フェルナー
人気のない新無憂宮の通路を小走りに急いだ。エーリッヒの奴、言いたい事を言ってさっさと帰った。おそらくもう新無憂宮を出ただろう。黒真珠の間は大騒ぎだ、親睦会は直ぐに中止になった。エーリッヒの渡したディスクの写真によって何人もの人間がその場で逮捕された。おそらくそれ以外にも協力者は居るはずだ。その割り出しも急がねばならないだろう。
新無憂宮を出ると遠くに道路照明灯の灯りを浴びながら歩き去る男達の姿が見えた。距離、約三百メートルほどか。おそらくエーリッヒとその護衛だろう、駐車場に向かっているに違いない。走って後を追った。百メートルも走ると男達が足を止めた。そしてこちらを見ている。残り約五十メートルまで走った。そこからは息を整えつつゆっくりと近づく。
大体三十人程か、エーリッヒは中心に居るのだろう、姿は見えない。少しずつ彼らの事が分かった。昼間見たときはスーツだったが今は違う、全員が黒っぽい服を着ている。上はピーコート、下は膨らみ具合から見て防寒防水ズボン、半長靴、そしてレッグホルスター……。全員がグリップに手をかけている、ハーフグローブだ。近づく俺をじっと見ている。威圧感が凄い、嫌でも緊張した。
「アントン・フェルナーだ。昼間会ったから覚えている人間も居るだろう。エーリッヒに会いたい」
出来るだけ親しみを込めて言ったつもりだったが誰も反応しなかった。少しの間が有って中に通された、中央にエーリッヒが居た、こちらを見て
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