第七章 (2)
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俺は相談した…そう言いかけて、言葉が詰まった。
紺野さんは、「営業一課」宛てに抗議のメールや電話を入れたが、「伊佐木課長」個人には相談も、抗議もしていないのだ。紺野さんが呆然としていると、
「烏崎君、いつも言っているだろう。仕事の基本は『報告・連絡・相談』だよ。何かあれば、なんでも、私に相談してくれなければ、いけないよ」
子供に噛んで含めるような口調で、烏崎の肩を叩く。烏崎は青い顔をして、紺野さんと伊佐木課長を交互に見ながら席に着いた。伊佐木課長は、ぴしっと糊が利いたシャツの僅かな乱れを鏡を見たかのように正確に直し、口元に左右対称な微笑を浮かべた。
「…えぇ、皆さん。紺野君と、うちの烏崎をお許し下さい。聞いての通り、紺野君は連日の激務によるストレスで、烏崎は、開発チームと上層部との板ばさみによるストレスで、疲れ果てていたのです。完璧な新製品の開発は、確かに大事です!しかし、それは従業員の健康を犠牲にしてまで、成し遂げられるべきものでは、ありえない!」
伊佐木課長は、周りの反応を確かめるように一呼吸おいて、吐息をつくように語り始めた。
「とはいえ、逼迫しているわが社において、年末商戦は無視できないところです。…それで、どうでしょう?私に一つ、案があるのですが…」
「…案って、何よ」
柚木が低い声で促した。紺野さんは灰皿に吸殻を押し付けると、最後の紫煙を、深いため息と一緒に吐き出した。
「想像はついただろう。…俺達は、MOGMOGの一番大事な部分を仕上げられないまま、ただ年末商戦に間に合わせたんだよ」
柚木は、口をつぐんでしまった。何を思っているのか、その表情からは読み取れない。僕は…
そんなに衝撃を受けていなかった。
なんとなく、気がついていたような気さえする。
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紺野さんは全部話してはくれなかったけど、市販されているMOGMOGと、ビアンキを始めとするMOGMOGαの違いについて、僕なりに2通りの想像をしていた。1つは、MOGMOGαは市販されているMOGMOGのバージョンアップ版…所謂MOGMOGパート2みたいなものじゃないか、という想像。
そしてもう1つは、MOGMOGとMOGMOGαは、全くの別物なんじゃないか、という想像。MOGMOGαは、ただのバージョンアップ版とは違うんじゃないか?とうっすら思っていたのには、理由がある。
MOGMOGとMOGMOGαの間には、互換性がまったくない。
バージョンが違うソフトで保存されたデータが開けなかったり、開けても正しく作動しないことはよくある。それでも、完全に別のソフトと認識されることは少ないと思う。ましてや、僕のソフトはいわば上位バージョンだ。MOGMOGに対応しているソフトが、MOGMOGαに対応しないという
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