第七章 (2)
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やつだ。雑誌で見たことがある。
「お?俺のジッポかい?…んふふふ、これガボールタイプ。ほれ、フタあけると、中にもラフィンスカルが入ってるんだぜ、ほらほら」
ぱちぱちぱちぱち、と、蝶番が傷みそうな程ジッポを開けたり閉めたりしてみせる紺野さん。…相当、値が張ったライターなのだろう。ついいつものノリで『まじで?なにそれ見せて見せて!?』とか身を乗り出して食いつきそうになったが、度重なる脱線にイライラしだした柚木が怖いので、話をさりげなく戻す。ジッポはあとで見せてもらおう。
「…そんな無茶をされて、誰も逃げなかったの」
「あぁ。全員で職場放棄して逃げてやろうって話も出た。だけどな」
言葉を切って、紺野さんは煙を薄く吹き上げた。何かを探すように、視線をゆっくり泳がせると、一言ずつ確かめながら、ゆっくり言葉を紡いだ。
「結局、誰も出て行かなかった。どう言えばいいのかな…俺もあいつらも、見届けたかったんだ。俺達のMOGMOGが、どこに向かうのか」
紺野さんは、再び話を続けた。
しかし、開発にかかる時間は、上層部が提示してきている期限では足りない。交代で徹夜を繰り返す計算でスケジュールを引いても、期限内に仕上げられるとは到底思えなかった。
紺野さんは、コアな箇所に関与しないプログラムだけでも外部に発注できないか、このままでは皆死んでしまう、と上司に掛け合ったが、上司は首を横に振るばかりだった。
『情報漏えい絶対禁止』この大前提の前には、技術者の生き死になど問題にならないと、暗に突きつけられ、紺野さんはとぼとぼと山奥に帰った。
外部注文も増援も断られ(というか山奥に半年以上軟禁という条件を呑む社員が現れず)、激務によるストレスで血を吐くメンバーが続出。とうとう、開発の継続すら困難な状態に陥った。もう打つべき手は「納期の後ろ倒し」しか残っていない。紺野さんは激務の中、生活必需品の買出しに現れた八幡の車をジャックして東京に戻り、決死の直訴に踏み切った。社内で波風が立つことを覚悟で、営業チームを通さずに上層部へ直訴したのだ。…案の定、製作現場の現状は上層部まで届いていなかったらしく、全員の勤務時間をまとめて提出したところ、ひどく驚かれ、緊急会議を招集することになった。
「外注は無理、増援も不可能!――いくら俺達でも、ない袖は振れない!…開発チームは恐慌状態です。このままこんな納期で推し進めていく気なら、全員一斉に、辞表を叩きつけるしかない!」
営業1課に在籍する同期の烏崎が、イスを蹴って立ち上がった。
「自惚れるな!…お前らの代わりなんて5万といるんだからな!!」
「――会議室に集められた面々は、俺と、関係部署の部長、あと専務クラス数人と、法務部の主任…それと営業部長と、MOGMOG担当営業が数人…」
ふたたび紫煙を噴き上げて、紺野さ
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