第36話
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ニセモノってことか。
ああ、非常に残念だ。」
その言葉に空気が静止する。
すると魔術師は口の中で何かを呟いた。
「ニセモノじゃダメなんですか?
ニセモノは、平和を望んじゃいけないんですか。
ニセモノには、御坂さんを守りたいと思う事さえ許されないんですか?」
「・・・・・」
「でもね結果が出てしまったから、麻生恭介は危険だと「上」が判断してしまったから。
分かりますか?
自分がどんな気持ちで「海原」と入れ替わったのか。
自分はただ御坂さんとその世界を守りたかった。
でも、もう守れませんよ。
自分はあなた達の敵になってしまいました。
なりたくなかったのに、なってしまった。
自分はあなたじゃないんですから、あなたのようなヒーローにはなれないんだから。」
再び二人の間に沈黙が走る。
その時だった。
海原は仰向けに倒れているので分かってしまった。
さっきの「槍」の能力が鉄骨にぶつかり鉄骨の構成をバラバラに分解したため、ネジやボルトの外れた太い鉄骨が今まさに麻生の頭上へ降り注ごうとしていた。
魔術師は咄嗟に麻生の身体を突き飛ばそうとしたが麻生の言葉を聞いてその魔術師の行動が停止する。
「お前はニセモノか本物かっていうくだらない事で悩んでいたんだな。」
え?、と魔術師は呟く。
麻生は左手を握りしめ頭上を見上げる。
そこには麻生の身体を貫こうとしている鉄骨が落ちてきていた。
そして降り注ぐ鉄骨をさっき魔術師の顔面を殴るように鉄骨も殴りつける。
殴られた鉄骨はミシミシと音をあげて最後には粉々に砕け散ってしまう。
その後に何本もの鉄骨が降り注ぐが麻生は右手を突きだすと、鉄骨同士がくっつき合い巨大な鉄の塊へと変化する。
そして鉄の塊の周りを取り囲むように透明な何かが覆う。
麻生の手と手の間にも大きさは違えど丸い球体があり、それを両手で圧迫していくとそれに反応するかのように鉄の塊を覆っている球体も徐々に小さくなっていき、鉄の塊もそれに圧迫されて小さくなっていく。
最後に麻生が持っている球体がパン!、と音を立ててなくなると鉄の塊を覆っていた球体は鉄の塊と一緒に消えてなくなっていた。
これは鉄骨を磁力で一つに纏め、空間圧縮を使う事で鉄骨を消滅させたのだ。
魔術師はその光景をただ唖然と見ているだけだった。
そして同時に思った。
この男には勝てないと。
「お前はニセモノが平和を望んじゃいけないですかと聞いたな。
俺は望んでいもいいと思うぞ。」
「何を言って・・・」
「平和を望む気持ちにニセモノも本物もない。
ただ自分が本気で望めばその気持ちにニセモノとか本物とかそういったものさしは必要ないからな。」
麻生の言葉に魔術師はただ黙って聞いている。
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