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渦巻く滄海 紅き空 【上】
四十三 影と陰
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幼馴染の奇行に、信じられないとばかりに目を見開きながら。


何も持っていないシカマル。クナイを手にしているテマリ。両者の決定的な違いは、武器を所持しているか否か。
「【影真似の術】の恐ろしいところはな。自分で手を下さなくても相手が自決するって事だ……意味、わかるよな?」
一言一言区切るように話す。そうしてシカマルは緩く握った手をゆっくり上へ掲げた。同様にテマリの手がクナイを持ったまま、首元へ近づく。クナイの先端が首を軽く刺す感触がして、彼女は耐え切れずに声を張り上げた。
「ま、待った…!こ、降参する…ッ!!」
テマリがそう叫んだ途端、シカマルは術を解いた。肩を解すように首を廻す。

テマリが降参するようにわざと脅したものの、もし降参しなければ自分から負けるつもりだった。加えて【影真似の術】の連発でそろそろチャクラがヤバい。やっぱ二週間ほど修行したところでそんな変わらねえかな、とボヤキながらもシカマルは安堵の溜息をついた。

既に戦意喪失したシカマルを尻目に、テマリはクナイを遠方へ投げ捨てた。忌々しげにクナイを睨む彼女の傍ら、試験官の不知火ゲンマが審判を下す。

「勝者――奈良シカマル!!」


高らかに空へ響き渡った己の名を耳にしながら、シカマルは観覧席を見上げた。自身を見下ろすナルと目が合う。満面の笑みを眩しげに仰いで、シカマルは微笑んだ。
(やっぱ、同じ空でもこっちのがいいよな)

ナルの瞳とそっくりな青い空。西へ傾き掛けた太陽が燦々と会場全体を照らしていた。












「俺を知っているか?」

唐突な問い掛け。何の前触れもなく発せられた問いに、ダンゾウは口元を微かに歪めた。
「うずまきナルト。今回の中忍試験の受験者であり、音の下忍。予選試合を通過したものの、別試合に介入し、失格となった…だが、」
まるで見てきたかのようにつらつらと述べ、一度断ち切る。一呼吸置いて、ダンゾウは猶も続けた。
「それは表。色々と裏の顔があるようだな」

常に情報通のダンゾウ。とうに自身の近辺を調べ上げている彼の話にナルトは耳を傾けていた。予想通りの答えに己の推測が間違いではなかったと確信する。

絶壁の基部。崖底から突き上がってくる風を間近で感じる。風の絶叫を耳にしながら、ナルトは彼方此方に潜むダンゾウの部下達の気配を探り当てていた。辺りには剥き出しの垂直な岩壁がそそり立っているため、身を隠すには誂え向きな地形である…ナルトを除いては。

ふと鋭い視線を感じたので顔を上げると、ダンゾウの傍で控える色白の少年が警戒心を露にナルトを睨んでいる。ダンゾウの配下であるその少年ではなく、彼の頭よりやや高い場所にある岩にナルトは目を向けた。眼前の崖上で一匹の猫がこちらをじっと見下ろしてい
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