四十三 影と陰
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かってきた刃物を避けようと、シカマルが動いた。当然シカマルと影が繋がっているカマタリも動き、風の攻撃が外れる。その隙に口寄せの術を解くテマリ。
せっかく操っていた駒が消えてしまい、シカマルが落胆の吐息を吐いた。反面、口寄せ動物を対戦相手から解放したテマリは安堵の息を漏らす。
「惜しかったね。だが此処までは影を伸ばせまい」
自身の武器である扇子が遠くに飛ばされた故に、テマリは壁に突き刺さったもう一つのクナイを手にとった。
扇を取りに行きたいのは山々だが、都合の悪いことに其処は既にシカマルの影の領域内。対して、陽の高さと影の攻撃限界距離を計算しても、今の自分の立ち位置は安全地帯。そこで先ほど同様クナイをシカマルに投擲し、彼を扇子が落ちている地点から遠ざけようと思案する。
その時、観覧席からカンクロウが叫んだ。
「テマリ!上だっ!!」
弟の忠告に導かれるまま、頭上を見上げる。何か黒いモノが太陽を背に浮かんでいた。なんだ、と目を凝らして、直後青褪める。
(…ッ、しまった…!)
テマリが敏捷な動きで飛び退くのと、地面に影が落ちるのはほぼ同時だった。
クナイと額当て、それに上着を利用した影。パラシュートに見立てたソレはシカマルの計略通り、テマリの頭上にまで風に乗ってきた。その影の表面積を細長く伸ばす事でシカマルの攻撃距離が上回る。
目測した限界範囲を超え、テマリの影を追い掛けてくる影。それを近づけまいと危うげに避けつつ、テマリは対戦相手を振り仰いだ。試合途中まで羽織っていたはずの上着を脱いでいる術者の姿に舌打ちする。
足下ばかりに注意を向けていて上のパラシュートに気づかなかった。そう自らを恥じた彼女は追い駆けてくる影が動かなくなったのを確認すると、クナイを構えた。カマタリに弾かれた扇子に視線を投げる。
(分身の術で陽動作戦をやるか。一人がクナイを投げ、それに気を取られている隙に扇子を拾いに行く。扇が手元に戻れば、こっちのもんだ)
次で決める、と意気込む。印を結ぶため一度クナイを手放そうとしたテマリの顔が強張った。
「……ば、馬鹿な…」
依然としてクナイを握り締める手。自身の意思に反して緩まない拳を愕然と見下ろす。いや見下ろそうとした瞳すら自由に動かせない。
逆に印を結び終えたシカマルがおもむろに口を開いた。
「ようやく【影真似の術】成功」
身体の支配権を奪われたテマリはこの不可解な展開に言葉を失った。何も言えずにいる彼女の疑問に答えるべく、シカマルは僅かに首を巡らす。向けられた目線の先には、前試合でナルがネジの足を引っ張った時に出来た小さな穴があった。
まだまだ未熟なものの【土遁・心中斬首の術】で掘られた穴には僅かだが影がある。その影を利用するには気づかれずに
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